鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

外国人“患者”急増で病院混乱…話が通じず治療できない、保険利かず高額医療費トラブル

医師法上の「応招義務」の整理も課題

 今年はラグビーワールドカップが開催され、さらに、4月からは新たな在留資格制度がスタートしたことで、外国人労働者の受け入れが増加する。政府は、訪日外国人観光客数の目標を東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には4000万人、2030年には6000万人に置いている。こうした、外国人の増加に伴う外国人患者の増加に対して、政府はもっと積極的な対応を行うべきだ。

 たとえば、各国の政府と協力して、外国人観光客に対して「海外旅行保険」への加入を呼びかけるべきだろう。海外旅行保険にはさまざまなサービス内容のものがあり、必ずしも外国人観光客が患者となった場合に“万全なもの”とはいえないが、それでも保険に加入していることで、外国人患者の治療にあたる病院のリスクや負担を軽減できる。

 また、外国人患者とのコミュニケーションを円滑に行うために、「医療通訳」の育成を促進することも必要。外国人患者の増加に比べ、現在の医療通訳の数はあまりにも少ないといわざるを得ない。特に、外国人労働者や外国人観光客の増加により、これまで外国人患者は東京を中心とした大都市圏に集中していたのが、地方に分散しているため、地方の病院の受け入れ体制の整備は急務だろう。

 政府による手続き面での見直しも必要だ。たとえば、外国人観光客が入院した場合など、日本での滞在期間が延びる場合には、ビザの更新手続きが必要になるが、この手続きが非常に煩雑だとの指摘がある。

 また、不幸にも外国人患者が国内で亡くなられた場合、宗教上の理由などから火葬ではなく、土葬を希望する場合がある。イスラム教では火葬が禁じられている。この場合、遺体を搬送することになるが、この手続きが非常に面倒なため、犯罪性のないもので医師の死亡診断書があるものなどに限っては、手続きを簡略化するといった措置を検討するべきだろう。

 以上みてきた事態に対して、適切な対応が行える体制を早急に構築していかなければ、「日本は観光客を誘致するだけで、観光客を受け入れる体制ができていない」との批判を浴びることになるだろう。

 最後に、医師法19条1項の医師の応招義務では、「診療に従事する医師は、診療治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と規定されている。道義的・倫理的な問題は別として、日本の医師法が外国人患者に対しても適用されるのかという点については、確固たる判断を示しておく必要があるだろう。

「お・も・て・な・し」は歓待し、サービスをよくすることだけではなく、「表裏なく」という誠実さも意味している。患者に対して、日本人、外国人の区別なく、最善の治療という「おもてなし」ができるようにするべきだろう。

(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

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