津田建二「IT/エレクトロニクス業界の動向」

みんなが「5G」通信を誤解している…日本企業は“本命”技術で世界に先行

 以上から、日本が米韓よりも遅れているという指摘は的外れなのだ。5Gの本命はミリ波帯の周波数を使ったサービスである。しかし、これはまだ世界で開発が始まったところであり、日本のNTTドコモソフトバンク、KDDIなどの通信オペレータは決して遅れてはいない。ドコモはすでに10Gbps以上の実験に成功している。日本では28GHzのミリ波の割り当てが始まり、開発が進んでいる。

5Gの特長は3つ

 5Gの特長を整理すると、高速のデータレートのほかに、応答速度であるレイテンシが1ms以下であること、そして携帯電話以外のデバイスも通信できることである。レイテンシとは応答時間といってもよい。従来は数百msでもよかったが、これを1ms以下に改善しようというわけだから、ほぼリアルタイム性が求められると考えてよい。

 3つ目の携帯電話以外のデバイスとは、まさにIoT(モノのインターネット)デバイスのことである。これまでの携帯電話サービスでは、第1世代はアナログ、第2世代がデジタルで帯域圧縮を利用できるようになった。つまり、アナログでは1人1回線だったのが、デジタルでは数人で1回線を所有できる。第3世代のデジタルはより高速になり、CDMA(符号分割多重アクセス)という方式でさらに圧縮が増した。この方式の基本特許を米クアルコム社が持っていたため、同社はほぼ独占的に特許を使うことができ、大いに潤った。しかし1社だけが大儲けという事態に対して反発は大きく、訴訟問題に発展している。

 そしてLTEという4G時代は、デジタル変調方式がCDMAからOFDM(直交周波数デジタル変調)に変わり、クアルコムは基本特許を持っておらず、同社はこれまでとは違い苦しい立場に立たされることになった。特許の数はやはりクアルコムがもっとも多いが、基本特許ではないため、3G時代ほど潤わなかった。

 そして5G時代は、4Gまでは携帯電話向け規格だったのと違い、IoTのようにあらゆるものがインターネットにつなげるための通信方式に変わる。デジタル変調方式は、もっと大容量を受け入れられるように、256QAM(直角位相振幅変調)あるいは1024QAMを利用するOFDMになるとみられる。

津田建二/国際技術ジャーナリスト、「News & Chips」編集長

国内半導体メーカーを経て、日経マグロウヒル(現日経BP)、リードビジネスインフォメーションと技術ジャーナリストを30数年経験。その間、Nikkei Electronics Asia、Microprocessor Reportなど英文誌にも執筆。リードでSemiconductor International日本版、Design News Japanなどを創刊。海外の視点で日本を見る仕事を主体に活動。
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Twitter:@kenjitsuda2007

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