こういうときに間に入って事を収めるのがコーディネーターの役割であるが、男の携帯を鳴らしても「現在は使われておりません」との音声がむなしく聞こえてくる。取材相手いわく、コーディネーターからは原稿確認の連絡など受けていないという。

 結局、その編集部員は退職を余儀なくされた。彼は反社勢力に「取り込まれてしまった」のではなく、単に騙されていたのだ。

 筆者は相手が信頼できると見れば義理を欠かさず、食事をおごったりおごられたりしながら、人間的な付き合いをしてきた。相手に渡す3~10万円の「取材協力費」は、その後も生きたお金となっている。

ソープ店長から差し出された封筒の中身

 また、スキャンダル誌の傍らで風俗誌の取材をしていたときのこと。某ソープランドに所属するソープ嬢のグラビア撮影に担当編集者として同行した。撮影が終わると、店長が「お車代です」と封筒を差し出してきた。念のため断っておくと、広告ではなく通常の取材記事である。筆者は即座に「いえ、けっこうです。これからもよろしくお願いします」と言って店を後にした。

 風俗業界にはさまざまな業態があるが、ソープランドの取材では時折、こうしたケースがあった。お金を渡すことで自分の店をひいきにしてもらい、雑誌への露出を増やして、より多くの客の目を引こうとするわけだ。ヘルスやデリヘルではあり得ない“お土産”である。

 筆者は、同行したカメラマンから「なぜ拒否したのか」と聞かれた。先輩から「絶対にもらうな。丁重にお断りしろ」と指示を受けていたこともあるが、もし受け取ったら、筆者の携帯に取材依頼の電話攻勢が頻繁にくることが目に見えていたからだ。また、「あの編集部は金で転ぶ」などと業界内で噂されるかもしれない。

 何より怖いのは、お金を受け取って記事にした場合、その店の女の子を必要以上に“ヨイショ”しなくてはならなくなる。その記事を読んだ読者が期待に胸と股間を膨らませて来店し、実際には味気ない、つまらない接客をされた場合はどうなるか。「あの雑誌に載っている情報は信用できない」とその後、雑誌自体を手に取ってもらえなくなってしまうこともある。つまり、自分で自分の首を絞める事態になりかねないのだ。

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