かつて国内の営業部門は4000億円台の営業収益を叩き出してきたが、19年3月期の収益は前期比18%減の3395億円。税前利益は52%減の495億円となり、金融危機当時の水準に逆戻りした。
デジタル化対応で後手に回ったことが不振の一番の原因だ。20年前にインターネット証券会社が営業を開始。若い投資家を徐々に奪われていったが、店舗と人を軸に据えた対面販売の事業モデルを変えなかった。「野村証券がネット証券に敗れる日が来る」(金融アナリスト)と囁かれているほどだ。
業務が低迷する最中、業務改善命令を受け、さらに「野村外し」が加速した。まさに、踏んだり蹴ったりである。
野村証券で詐欺疑惑
野村証券は7月2日、元社員が退職後に同社顧客を含む複数の投資家に接触し、架空の投資商品を提案している疑いがあると発表した。この投資商品には実体がなく、詐欺の可能性がある。この取引をめぐっては、現役の社員がかかわっている可能性があるとして、社内調査を進めるともに、警察に相談している。
野村証券の発表によると、この「元社員」とは、現在Foresight(フォーサイト)の代表取締役を務める中村成治氏のこと。同氏は慶應義塾大学法学部を卒業し14年4月、野村証券に入社。姫路支店に在籍し、16年9月に退職。
「当社を退職後に、当社のお客様を含む複数の投資家に接触し、架空の投資商品を提案している疑いがあることが判明しました。お客様への被害拡大防止の観点から、当社社員の関わりも含めて調査を進めるともに、警察への相談を行っております」
「中村成治氏の取り扱う投資商品は実体のないことが強く疑われます。同氏を紹介されたことのあるお客様や、同氏から取引を持ち掛けられたことのあるお客様など、不審に思われる点がございましたら、お取引部店もしくは本社お客様相談室へご連絡くださいますようお願い申し上げます」(野村証券の発表文)
【お客様相談室】
電話番号 0120-56-8604
受付時間 平日9:00~17:00(土・日・祝日・年末年始を除く)
詐欺の舞台になったのは、野村証券船橋支店。詐欺の被害に遭ったのは大手化学メーカーの退職者で、野村証券の顧客だ。
企業・情報サイト「OUTSIDERS REPORT」(6月18日付)によると、退職者の顧客のもとに昨年10月、船橋支店の営業担当者が訪れ、中村氏を紹介した。
<後に中村から送付された「融資斡旋スキーム商品概要」というペーパーには、「日本政策金融公庫の融資を使ったコンサルティングフィーを収入の基盤とする」として、1カ月の運用なら2~4%、3カ月なら6~12%の金利が得られる、と記されている>(「OUTSIDERS REPORT」記事より)
現役の営業担当者の関与を含めて、大がかりな詐欺事件に発展しそうな雲行きとなっている。
(文=編集部)
【続報】
架空の投資話で会社役員から560万円をだまし取ったとして、兵庫県警姫路署は8月22日、元野村證券社員の中村成治容疑者(29、神奈川県座間市)を詐欺容疑で逮捕した。会社役員は中村容疑者の野村證券時代の顧客。
野村によると「複数の顧客が中村容疑者から詐欺被害に遭った」と訴えており、姫路署が関連を調べている。発表によるとこうだ。中村容疑者は4月25日、会社役員(49)が経営する姫路市の店舗で、会社役員に「上場会社の間違いない情報を得ている」などと言い、560万円を詐取した疑い。姫路署は認否を明らかにしていない。
中村容疑者は2014年に野村に入社。16年9月に退職するまで姫路支店に在籍していたという。中村容疑者と連絡が取れなくなり、会社役員が今年5月に姫路署に相談していた。
野村の発表によると、中村容疑者は退職後、東京・港区六本木に投資会社を設立、代表取締役になっていた。その後、野村證券船橋支店を舞台にした詐欺容疑が発生。野村の顧客が被害に遭っている。このケースでは船橋支店の営業マンの関与が疑われており、中村容疑者の逮捕を突破口に、大がかりな詐欺事件に発展する可能性が高くなってきた。