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セブンペイ事件後も全面停止しないセブン&アイ、「鈴木敏文」不在で経営混乱の綻び露呈

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授

 セブン&アイは全社的な方針を掲げると同時に、省人化投資を加速するなどしてオーナーの不満を解消しなければならない。個別対応を続ける限り、組織全体の混乱は続く恐れがある。

“焦り”によるセブンペイの不正アクセス

 2つ目が、スマホ決済アプリのセブンペイにおいて不正利用が起きたことだ。原因は、2段階認証という当たり前の取り組みが導入されなかったことにある。なぜ、当たり前と考えられることができなかったか、同社は問題に向き合わなければならない。ITサービスの利用に関して、2段階認証は当たり前になっている。インターネットメールを使う際も2段階の認証が求められることが多い。それでも個人情報の保護には十分ではないとの指摘も多い。

 にもかかわらず、セブン&アイは2段階認証を導入しなかった。気になるのは、セブン&アイが電子マネーの「ナナコ」やセブン銀行の運営を通して、セキュリティーに関する相当の経験を積んできたことだ。不正アクセスの発生は、自社内の経験を十分に活用できなかったという問題も浮き彫りにしたといえる。

 記者会見にて同社は2段階認証を見送った理由を説明できなかった。否、なぜ導入しなかったか、明確な理由がわからなかったのではないか。強いて理由をあげるとすれば、同社全体に焦りが蔓延していた可能性がある。セブン&アイ全体で、スマホ決済の遅れを取り戻し消費増税への準備を進めるといった考えが強くなりすぎたのだろう。不正アクセスが発覚した後も、同社は利便性の向上を理由にセブンペイの全面停止を見送っている。

 同社は冷静に事態を把握するゆとりを大きく低下させてしまっているように思える。経営者は一刻も早く明確な方針を打ち出して、組織全体をまとめ直さなければならない。24時間営業に関する指針、キャッシュレス決済に関する取り組みと銀行ビジネスなどで得てきたノウハウの融合など、速やかな指針の策定が求められる分野は多い。

 経営者がその一つひとつに真正面から向き合うことが、浮足立つ組織を落ち着かせるために欠かせない。それができなければ、セブン&アイはコンビニオーナーや消費者からさらなる反感を買い、社会的な信用が低下する恐れもある。セブン&アイの経営は正念場を迎えている。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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