黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

大学の授業料全額免除も可能!無償化開始で変わる?「子の教育費」完全マニュアル

(2)給付型奨学金の支給の拡充

 続いて、給付型奨学金についてである。これまで日本では、公的な奨学金として給付型はなく、貸与型しかなかった。それが2017年度から、最大で年額48万円の給付が受けられる給付型がスタート。2018年度は約2万3,000人が給付を受けているという。

 今回の改正で、授業料等減免制度と同じく、住民税非課税世帯の場合、国公立は自宅生約35万円、自宅外生約80万円、私立は自宅生約46万円、自宅外生約91万円の給付が受けられる(年額)。なお、高等専門学校の学生については、学生生活費の実態に応じて、大学生の5~7割程度の額が給付される。ただし、給付型奨学金も年収要件があり、年収に応じて3分の2あるいは3分の1と給付が引き下げられる。

 次の図表は、(1)(2)の学校種類別の給付額等の一覧である。

進学先等によって、約110万円から約670万円の援助が受けられる!

 さらに、以下の図表は、それぞれ上限額が適用になった場合の在学中に受けられる給付金等を試算した合計額一覧である。最も低いのが専門学校・国公立の自宅生の場合で、約110万円(2年間で試算)。最も高いのが、大学・私立の自宅外生の場合で、約670万円となっている。ちなみに筆者も地方出身の私立大学進学組。在学中は貸与型奨学金を利用し、アルバイトに明け暮れる日々だったが、これだけの給付が受けられたら、さぞ精神的にも経済的にも余裕を持って勉学に励めたことだろう。

大学無償化で子どもの教育費プランはどう変わる?

 では、今回の大学無償化によって、今後の子どもの教育費プランはどう考えるべきだろうか?

 通常、子どもの大学進学に備えるための目標額としては、少なくとも大学進学前(高3)までに300万円。進学コースを考慮して、できれば大学進学前(高3)までに500万円(いずれも子ども一人あたり)とアドバイスしている。いずれも大学の入学金や授業料、自宅外通学の場合の生活費などに備えるためだ。

 それには、国から支給される「児童手当」に手をつけずに0歳から貯められれば約200万円になるので、これをベースに積立定期やジュニアNISA、学資保険等で100~300万円をコツコツ準備する方法が王道である。

 さて、新制度導入によって、今後は? といえば、実は個人的にはあまり変わらないのでは、と考えている。というのも、これらの恩恵が上限額まで受けられるのは、あくまでも住民税非課税世帯のみ。全世帯が対象なわけではない。そして、年収が上がるにつれて、給付額は縮小し、年収380万円超世帯は、いずれの制度も適用を受けることができない。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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