ジャパンディスプレイ、金融支援の枠組み崩壊…市場で“最悪の事態”も想定内に

 アップルの今回の支援策は、債権の一部放棄や1億ドル(107億円)の資金支援など踏み込んだ内容になっている。

 JDIの19年3月期の連結売上高(6366億円)のうち、アップル向けは3856億円。アップルのスマートフォン「iPhone XR」の販売が伸びず、パネルの発注を減らしたため、18年3月期比で2%減った。しかし、アップル向け比率は60.6%と前期の54.9%から高まった。中国メーカーのスマホ向けの受注で苦戦したことが原因だ。アップルに依存する収益体質は一段と強まった。

 一方、アップルからの前受金など1700億円を投じて建設した白山工場(石川県白山市)は、iPhoneの生産減で7~9月の稼働停止に追い込まれた。

 アップルは5月末、JDIが白山工場建設のためにアップルから借り入れた資金(19年3月末の未返金分1000億円)の返済について、2年間は半額を繰り延べる支援を決めていたが、これを4分の3に増やした。JDIはアップルとパネルの発注の上積みに関する協議も続けている。

ハーベストグループが639億円の出資

 JDIは6月28日未明、ハーベストから522億円の金融支援を受け入れることで合意した。ハーベストは「出資額のうち1億ドル(107億円)をJDIの主要顧客から提供を受ける」としている。この「主要顧客」とは、アップルのことだ。

 さらに7月12日、ハーベストは117億円を追加出資し、JDIは目標としていた800億円調達のめどがたった。161億円を出資することになっていたオアシス・マネジメントは6月28日、支援を確約するコミットメントレターを出したという。

 ハーベストは投資決定通知の際に、「中国政府からの介入がないこと」などを条件として挙げた。一方、オアシスは出資の条件として「JDIの主要顧客から、製品の購入中止や購入量の大幅な削減に関する通知を受けていないこと」「JDIの株価(終値)が出資の完了までに30円を下回らないこと」などを求めている。

 ハーベストもオアシスも、支援は条件付きということになる。JDIが中国で計画する有機ELパネル工場の建設に対する中国政府の判断や、JDIの主力事業となるスマートフォン向け液晶パネル事業の先行きを懸念していることを表している。

 JDIの支援の新たな枠組は、本当にできるのだろうか。5月に50円を付けた株価は、“最悪の事態”をすでに織り込んでいる。JDIの金融支援については、これまでに何度も状況が変わってきているため、調達のめどがたったとはいえ、まだ予断を許さない。

 アップルが正真正銘の“時の氏神”になるかどうかは、まだわからない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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