阿部誠「だまされないマーケティング…かしこい消費者行動:行動経済学、認知心理学からの知見」

店の待ち時間や企業の広告に隠された、無意識のうちに顧客満足度を上げる施策

認知的不協和の発生を防ぐ

 商品・サービスを購買し消費したあとでも、売り手は顧客満足度にある程度影響を与えることができます。購買に関して顧客の中で態度、信念、行動に矛盾が生じると(これを心理学では認知的不協和と呼びます)、満足度が下がってしまいます。たとえばある商品を衝動買いしてしまったものの、よくよく考えると、はたしてそれは本当に必要だったのかと疑問を感じてしまっては、満足しているとはいえません。

 企業は顧客の購買を正当化・理由づけすることによって、認知的不協和の発生を防いだり、もし生じた場合はそれを解消させたりする手助けを提供することができます。

 たとえばワケアリ商品には、「あなたは安物のバーゲン品に飛びついたのではなく、いい商品を理由があって安く買えたのです。あなたの選択は正しかったのですよ」という意味合いがあります。高価なモノ・サービスに対する購入に罪悪感を持つ顧客に対しては、「自分へのご褒美」というように、「たまには贅沢をしてもいいのですよ」という広告が効果的です。

 人気No.1やランキング1位を謳う広告は、購買を検討している新規顧客のみならず、すでに購買した顧客に対して「多くの消費者が下したように、あなたの判断は正しかったのですよ」というメッセージを送っています。また、値引きクーポンは額面が少額でも、「クーポンで安く買えたから」と自身の購買を正当化させるきっかけをつくります。家電量販店やスーパーマーケットの最低価格保証は、顧客に購入価格に対する認知的不協和を抱かせない作用があります。
(文=阿部誠/東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)

編集部のイチオシニュース
Pick Up News

人気記事ランキング

連載

ビジネス

総合

SNS