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田中圭太郎「現場からの視点」

東京五輪期間、東京メトロ「歩行困難」…パラリンピック期間、障害者の移動が困難かつ危険

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 では、新国立競技場までのアクセスはどうなっているのだろうか。東京都内の鉄道は基本的にエレベーターが整備されている。新国立競技場に近いJR千駄ケ谷駅や、都営地下鉄大江戸線の国立競技場駅では、現在エレベーターの増設工事も行われているところだ。

 しかし、車いすで一度に乗れる人の数は限られ、多くの人が一度に移動するにはかなりの時間がかかる。予定されているエレベーターの数で、障害のある人がスムーズに移動できるかは疑問だ。

 エレベーターに関しては、モラルの問題もある。大きな荷物を持った外国人観光客や、高齢者、ベビーカーのユーザーもエレベーターを利用する。しかし、利用者が多いときに、こうした人々や障害のある人を追い越して、我先にとエレベーターに乗り込む人がいる。本当に必要な人がいつまでも乗れないのだ。満員電車の優先席や車いすのスペースについても同様だろう。本来必要な人以外は使わない、という啓発も必要ではないだろうか。

難しい国内の遠距離移動

 交通に関する問題は、東京都内だけではない。海外から訪れた障害のある人のなかには、東京だけでなく日本国内各地の観光地を旅行したい、と思う人もいるだろう。

 しかし、車いすユーザーにとっては、国内の遠距離移動も困難が多い。例えば新幹線。便数はそれなりにあるものの、車いすで利用できる座席は1つの便に2席か3席しかない。しかも予約はJR東海を除きオンラインでできず、電話で予約できるのは基本的に2日前まで。当日の場合窓口に行く必要があるが、駅員が対応できる便を調整するため、数時間も待たされるという。

 もうひとつ例を挙げると、高速バスや空港からのアクセスバスは、車いすで乗ることができるスロープやリフト付きのバスが少ない。国土交通省の調査によると、高速バスを含む乗り合いバスのうち、スロープやリフトがついているバスは2017年度末時点で5.9%しかない。

 飛行機で移動する場合は、車いすでもほぼ問題なく乗れる。それだけに、空港と各都市や観光地を結ぶバスのバリアフリー化が進まなければ意味がないだろう。地方では、車いすのままで乗れる空港アクセスバスがないことも珍しくない。

 東京都と東京観光財団は、リフト付き観光バス導入支援事業を16年から始めた。都内に営業所があるバス事業者に、1台当たり1000万円を上限とする補助金を給付する。東京都によると、これまでに50台以上の申請があったという。その中には、空港アクセスバスに活用されるものも含まれている。

 リフトやスロープがついたバスは高額で、荷物を載せる場所や、客席も少なくなるなど、事業者にとって導入のハードルは高い。路線の何割に導入するなどの目標を定めた上で、東京都の支援事業のように、国や自治体が補助しなければ導入は進まないのではないだろうか。

ユニバーサルデザイン推進の議論を

 パラリンピックを視野に入れた交通対策は、これからさらに検討が進むと思われる。しかし、行政を取材していると、オリンピックを成功させるのがまず第一で、オリンピックの対策をしていればパラリンピックは十分フォローできると考えているのでは、と感じることもある。

 果たして、オリンピックの対策をすれば、パラリンピックの対策も十分だといえるのだろうか。パラリンピックのチケットの販売は、各会場が満席になる230万枚を見込んでいる。当然、車いすユーザーや、視覚や聴覚などに障害のある人が、オリンピックの時以上に会場を訪れると考えるほうが自然だろう。

 このままでは移動する際に危険が伴い、行きたくても行けない、と思う人も出てくるかもしれない。多くの人が観戦できるようにするためにも、パラリンピック独自の交通対策や、公共交通機関以外の移動手段の導入も、検討する必要があるのではないだろうか。

 もっといえば、オリンピックやパラリンピックの期間だけでなく、社会全体で誰でも利用できるユニバーサルデザインを推進するのであれば、政策の力が必要だ。

 公共交通のバリアフリーが進んでいるイギリス、スウェーデン、アメリカ、カナダは、法律によってバリアフリーを義務付けている。法整備をしても努力義務が多い日本の政策では、障害がある人にとって本当に必要な対策が見過ごされる可能性がある。オリンピックとパラリンピックをきっかけに、議論が進むことを望みたい。

(文=田中圭太郎/ジャーナリスト)

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