セブンイレブンの沖縄進出、四国攻略失敗の二の舞懸念…地域密着のファミマと真逆戦略

セブン-イレブンの店舗(撮影=編集部)

 セブン-イレブン・ジャパンは7月11日、沖縄県に初めて出店した。沖縄は最後の“空白県”だった。現地法人のセブン-イレブン・沖縄が、那覇市や糸満市などで14店を同時に開業した。

 セブンは沖縄県内で2020年2月末までに50店、24年7月末まで250店にする計画だ。沖縄は人口が増え、訪日外国人も増加しており、セブンは成長市場とみている。

ファミマ325店、ローソン232店で迎え撃つ

 沖縄県内の店舗数は6月末時点でファミリーマートが325店で首位。ローソンは232店だ。共に現地資本と手を組み、単独で事業展開を目指すセブンとは一線を画す。

 沖縄進出がもっとも早かったのはファミマ。1987年、地元の流通大手、リウボウと共同出資(出資比率はリウボウ51%、ファミマ49%)で沖縄ファミリーマートを立ち上げた。百貨店リウボウは、沖縄最大の繁華街である国際通りの商業施設ハピナハや不動産事業などを広く手掛けるリウボウホールディングスグループの一員だ。宮古島や石垣島など離島にも店舗網を築いている。

 ちなみに、ファミマの看板商品である骨なしフライドチキン「ファミチキ」は、沖縄ファミマが2000年に商品化した骨付きの「フラチキ」がルーツである。

 ローソンは1997年にローソン沖縄を設立し、単独で沖縄進出した。だが、うまくいかず、09年に運営をサンエーとの共同出資(出資比率はサンエー51%、ローソン49%)に変更した。ローソンが地元資本と組むのは全国初だった。

 サンエーは地元の総合小売企業。ローソンはサンエーと組むことで、食品メーカーと連携できるようになった。

 東証1部に上場しているサンエーの19年2月期の連結営業収益は1898億円。連結子会社のローソン沖縄の加盟店からのロイヤルティー収入による営業収入は前期比6%増の70億円、当期純利益は同4%増の11億円。サンエーの当期純利益94億円の12%を稼ぎ出す“ドル箱”となっている。

ファミマとローソンの平均日販は65万円

 帝国データバンク沖縄支店は、県内コンビニエンスストアの動向調査をまとめた。人口10万人当たりの店舗数で沖縄は38.6店。全国平均(44.6店)を下回った。セブンの出店で供給過剰を懸念する見方もあるが、帝国データバンク沖縄支店は「人口規模で見ると、沖縄に出店余地がある」と指摘している。

 沖縄県の小売業の2018年度の売上高シェアは、ローソンと提携しているサンエーが32%でトップ、次いでイオン琉球が15%、3位は沖縄ファミリーマートの13%(18年2月期の売り上げ748億円)。ローソン沖縄は売上高を公表していない(ロイヤルティー収入のみを公表)が、帝国データバンクは「店舗数からシェアは5~6%程度」と推定する。

 コンビニの18年度の平均日販(1店舗当たりの1日の平均売上高)は、全国平均でセブンが65.6万円、ファミマは53.0万円、ローソンが53.1万円。同支店の調べによると県内のファミマとローソンの日販は共に65万円前後で全国平均より10万円以上も高い。沖縄には先行してきた2社のコンビニしかないことや、コンビニでの食品購入が全国に比較して多いため、平均日販が高くなるのだという。

セブンはドミナント戦略

“コンビニ生みの親”と呼ばれる鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディングス前会長は、ドミナント(高密度多店舗出店)戦略を取り、儲かるところに集中的に店舗を展開してきた。「セブン-イレブンの競争力は突き詰めるとドミナント戦略に行き着く」と語っていた。

 一定エリア内に高密度に出店すれば、物流・広告・店舗指導などで効率がアップすると考えているからだ。商品を短時間で供給するための専用工場をまず設けてから出店するというのが基本戦略である。

 だから、儲りそうもない地域には出店しなかった。その典型が四国だ。ところが、ドミナント戦略を棚上げして13年に四国へ初上陸し、5年間で四国全県に570店を出す計画を打ち出した。当時、ローソンが432店、ファミマは262店あった。

 四国でのドミナント戦略は、ほかのコンビニオーナーの廃業や鞍替えを前提としたものだった。旧サンクス系の地域会社を手に入れるなど好調なスタートを切ったが、570店を出店するとの当初目標には届かず、6年たった現在も354店にとどまる。ローソンの630店、ファミマの544店に遠く及ばない。セブンといえども四国は攻略できなかった。

地域密着型の先行2社の牙城を切り崩せるか

 セブンは単独での出店を貫く。初上陸の沖縄でも、得意のドミナント戦略でファミマやローソンの牙城を切り崩すことができるのだろうか。

 流通の専門家たちは、かなり厳しいとみる向きが多い。沖縄の中心部は米軍基地で、出店余地は少ない。また、四国では既存のコンビニオーナーの鞍替えをテコに進出したが、その手法が沖縄では難しい。

 先行2社が組むパートナーは、ファミマがリウボウ、ローソンがサンエーという地場流通大手である。なによりも、ファミマ、ローソンとも日販は65万円前後と高い。セブンの全国平均の日販に匹敵する。つまり、“稼ぐ力”を備えている。四国では、日販が極端に低いサンクス系の地域会社がセブンに鞍替えしたが、沖縄では日販が鞍替えする動機にはならない。

 ファミマの澤田貴司社長は4月10日の決算説明会で、好調な“沖縄モデル”に触れたうえで、こう述べた。

「本部が一律にいろいろなことを展開する時代はとっくに終わっている。コアの部分は本部がしっかりやるが、地域に密着して権限をどんどん委譲することをやっていかないといけない」

 澤田氏は「経営のゴールは沖縄ファミマ」とも言っている。

 本部直轄のドミナント戦略をとるセブン。地域密着型のファミマとローソン。沖縄ではセブンの人気は高い。地元の消費者にとって憧れでもある。沖縄で三つ巴の戦いが始まった。2年後には、あらかた勝負がつくとみられている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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