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木下隆之「クルマ激辛定食」

トヨタ、知られざる独自の「水平対向エンジン」…ヨタハチとハチロクの因縁

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トヨタS800

 クルマに詳しい方でなければピンとこないかもしれないが、「水平対向エンジン」と聞いて、どのメーカーを思い浮かべるだろうか。SUBARU(スバル)、ポルシェ、おそらくこのどちらかのメーカーか、その両方だろう。

 エンジン内部の筒型のシリンダーが、地面に対して水平に並ぶのが「水平型」である。複数のシリンダーが背を向けるように対向し、それぞれが正反対の軌道でピストン運動を繰り返す。それが「水平対向型」だ。

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 確かに、スバルは古くは富士重工業時代から水平対向エンジンをつくり続け、「レオーネ」や「インプレッサ」などに搭載してきた。ポルシェも同様で、イメージリーダーである「ポルシェ911」には伝統的に水平対向6気筒エンジンを積んできた。「フラット6」は水平対向6気筒エンジンへの親しみを込めた愛称だ。今でも絶大な人気を誇る。

 一方で、トヨタ自動車の水平対向エンジンの歴史を知る人は少ない。現行の「トヨタ86(ハチロク)」には、スバル製の水平対向ユニットが積まれている。それはスバルとの共同開発で、生産もスバルに委託しているため、妥協の結果のように解釈されている。だが実は、1965年からすでにトヨタは水平対向搭載モデルを生産していたのである。

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 1965にデビューした「トヨタS800」がそれだ。正式名称は「トヨタ・スポーツ800」。「ヨタハチ」と呼ばれ親しまれてきた。トヨタ86の開発責任者である多田哲哉氏は、次のように当時を回想する。

「いろいろ調べているうちに、トヨタのライトウェイトスポーツカー(小型・軽量スポーツカー)のルーツは、水平対向エンジンにあることがわかりました」

 それがたまたま偶然なのか、意図してなのかは不明だが、「ヨタハチ」と「ハチロク」には因縁めいたつながりがあるのかもしれない。

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 トヨタS800の2シーターボディは、驚くほどコンパクトだ。コクピットに腰を下ろし、窓を開け放し、両手を広げて下ろせば、そのまま抱えてしまえそうなほどに愛らしい。全長は3580mm、幅は1465mm、高さは1175mmだから、乗り込むというより穴倉に潜り込むような感覚である。

 水平対向エンジンは2気筒である。排気量は、車名の由来になった800cc。OHV(オーバーヘッドバルブ)という、今となっては古典的な機構を採用していた。最高出力は45ps。それでも最高速度は155km/hに達したというから驚きである。

 実は今回、動態保存されていたトヨタS800レース仕様をドライブする機会に恵まれた。ステアリングを握ったのは、当時船橋サーキットで活躍したゼッケン20・浮谷東次郎号なのである。

 トヨタの老練なレジェンドメカニックの手によって入念にレストアされ、コンディションが整えられていることで、往時を忍ばせる確かな走り方を披露した。

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 もちろん、45psは最近の高性能車に慣れた体にとっては速いわけではない。だが、トコトコと子犬が散歩するように駆け回るから、ますます愛おしいのだ。エンジンサウンドは、「バフバフ」としていた。インプレッサやポルシェ911のようドロドロとした不等長排気ではない。だが、耳に届くキュートなサウンドは、確かに水平対向特有のビートを刻む。

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 スバルやポルシェだけでなく、トヨタにも水平対向の歴史があった。ヨタハチのモータースポーツでの活躍や、その可愛いフォルムに視点が奪われ、水平対向エンジンまで話題が発展しないのは可哀想に思えた。だから、ここで紹介しておきたい。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員
「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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