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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

米国株、近く大暴落の可能性…米国からアジア経済圏等に資金移動か

文=加谷珪一/経済評論家
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 本来であれば、景気がよいうちに利上げを断行し、景気悪化後の利下げ余地を大きくしておくべきところを、FRBは早々とそのカードを切ってしまった。もし本当に景気が悪化した時には、もはや打つ手がなくなっている可能性が高い。

 仮に、米国経済が一気に悪化せず、緩やかにスローダウンしたとしても、低金利による景気刺激策は選択できないので、再び景気が回復するまでの期間は長引くと思ったほうがよいだろう。恐慌のような事態にはならなくても、株価の低迷と低成長、そして低金利が延々と続く、不機嫌な時代が到来する可能性がある。

 すでに米国の長期金利は2%ギリギリの水準まで下がっており、ここからさらに低金利が進むと、投資対象としての魅力は大きく薄れてしまう。株価が調整に入った後、米国の株式市場からは多くの資金が流出するはずだが、その時には、もはや米国債には投資できないという事態も十分に考えられる。

新興国市場があらたな受け皿になる可能性も

 では、米国の株式市場から引き上げられた巨額の資金はどこに向かうのだろうか。米国経済が打撃を受けると新興国はさらに大きなダメージを受けるため、一般的に新興国は景気低迷時のドル資金の受け皿にはなり得ない。だが、場合によってはトランプ政権が進めている世界経済のブロック化が状況を変えているかもしれない。

 これまで世界経済は米国を中心に回っていたが、トランプ政権の誕生はこの動きを大きく変えた。アジア太平洋地域では、徐々にではあるが、中国を中心とした経済圏が出来上がりつつあり、米国と一心同体と思われていたメキシコも、トランプ氏によるNAFTA(北米自由貿易協定)見直し論によって、米国との距離を意識せざるを得ない状況となっている。

 南米では、アルゼンチンとブラジルで通貨統合構想が浮上するなど、これまでにない動きも出ている。特にアルゼンチンは自国通貨の価値毀損が激しく、あくまでも構想レベルの話ではあるが、トランプ政権以前の世界秩序では、こうした動きが顕在化することはなかっただろう。

 中国を中心としたアジア経済圏、南米経済圏、そしてユーロ経済圏が相互に補完する形であれば、突出した規模となっているドル資金の受け皿の一部になり得る可能性は十分にある。世界経済のブロック化が、逆に国際的な資金の移動を促すのだとすると、これほどの皮肉はない。
(文=加谷珪一/経済評論家)

加谷珪一/経済評論家

加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。
加谷珪一公式サイト

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