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木村隆志「現代放送のミカタ」

『ノーサイド・ゲーム』なぜ“日曜劇場×池井戸潤”なのに「暑苦しさ」がなく好評?

文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト
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女性目線の松たか子がアクセントに

 もうひとつ見逃せないのは、すでに多くの声が上がっている大泉洋と松たか子のやり取り。

 夫婦役を演じる2人の何気ない会話が、激しい戦いや肉体のぶつかり合いが続く映像のアクセントとなり、“日曜劇場×池井戸潤”のアレルギー反応としてもっとも大きかった「暑苦しい」という声をやわらげている。これまでも『日曜劇場』は家庭内のシーンを箸休めのように入れてきたが、今作が意図的に増やしているのは明らかだ。

 さらに注目したいのは、妻のキャラクターが、これまでのような男性目線の良妻賢母ではないこと。男のロマンを追いかける夫にストレートなダメ出しをする妻は、まさに女子目線のキャラクターであり、「ただ熱いだけの男くさいドラマ」に陥らないアクセントとなっている。

 また、「暑苦しい」という声は、“日曜劇場×池井戸潤”の作品をすべて手がけてきた福澤克雄監督の演出によるところが大きかった。その点、今作はいきむようなセリフ回しこそ変わっていないが、顔面のアップを多用するカメラワーク、随所にインサートされる燃えたぎった太陽、大量のエキストラなどの力技で圧倒するスタイルの自制が効いている。

 福澤監督は学生時代、ラグビーの名選手だっただけに、プレーのシーンには相当な迫力があり、その意味で「これまでのような力技は必要ない」とみなしているのか。いずれにしても、過去の作品よりバランスが取れているのは間違いない。

 だから、「暑苦しい」ではなく、「熱い」という印象でとどまっている人が多いのだろう。

主人公に負けない関係者の男意気

 話をドラマ業界全体に移すと、近年ドラマ枠のほとんどが女性視聴者をメインターゲットに据えて制作している。「視聴率獲得」「スポンサー受け」などのさまざまな理由から、男性視聴者を狙うのは難しい時代なのだ。

 一方、ビジネスとラグビーをモチーフにした『ノーサイド・ゲーム』のターゲットは、誰がどう見ても男性。しかも、これほど愚直に“男のロマン”を追うようなストーリーでは、女性層からの支持はなかなか得られないはずだ。

 もしかしたら、視聴率が過去の作品を下回ることは想定内なのかもしれない。もっと深読みすれば、9月20日から日本で開催される「『ラグビーワールドカップ2019』を盛り上げよう」(試合中継は日本テレビ)という気持ちがあるのかもしれない。

 もちろん、原作者の池井戸潤、ドラマを放送するTBS、小説を発行するダイヤモンド社の3者による巧みなビジネスプロジェクトがベースにあるのは確かだが、君嶋に負けない関係者たちの男意気を感じるのも、また事実だ。

(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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