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アサヒ、「スーパードライ」依存経営の綻び…「2兆円」海外買収傾注で抱えた時限爆弾

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 アサヒが、国内におけるスーパードライの販売力を軸に成長を目指すことは難しくなっている。同社の競合相手の戦略を見ても、キリンは医薬品事業の強化を通した事業ポートフォリオの分散を重視している。これに対してアサヒはビール事業にこだわり、特に海外での競争力向上を重視している。

世界のビール市場への飛躍目指すアサヒ

 アサヒの戦略は、高級ブランドの強化と規模の経済効果の追求に分けて考えるとよい。
 
 まず、アサヒは欧州事業の強化に取り組んだ。目的は、高級ビールブランドを手に入れて、収益性を引き上げることだ。2016年から17年にかけて、同社は英SABミラーを買収したインベブからイタリアやチェコの事業を買い取った。一連の買収総額は約1.2兆円だ。今年4月には、英フラー・スミス&ターナーから高級ビール事業を約360億円で買収した。
 
 一方、今回の豪事業の取得には、規模の経済効果を重視する考えも込められている。アサヒがインベブから買収するカールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズは豪最大手だ。高シェア事業を傘下に収めることは、売上高の増大とスーパードライの販路拡大の両面で効果が期待できる。

 突き詰めていえば、アサヒは、規模と収益性の両面で、インベブやオランダのハイネケンのような世界有数のビールメーカーの仲間入りを果たそうとしている。アサヒが本気で世界のトップ入りを目指すためには、さらに海外事業を強化しなければならない。
 
 世界のビール業界では、新興国市場のシェア獲得をめぐる覇権争いが激化している。インベブは、先進国と新興国においてプレミアムビール市場でトップブランドを獲得することに注力している。同社は収益の規模と利益率の両面を追求している。その尺度に合わない資産は売却し、財務内容の健全化に充てるのがインベブの方針だ。ハイネケンは、東南アジアやメキシコでシェアを伸ばそうと資産の取得を進めている。

 すでにインベブは世界の3割近いシェアを抑えた。新興国では所得の高まりとともに高級ビールへの需要が高まる。それに合わせ、同社の事業ポートフォリオも変化していくはずだ。トップシェアを誇る企業の買収戦略は、ほかの企業の経営にも無視できない影響を与える。変化に乗り遅れた企業が、買収の対象とみなされる可能性もある。世界のビール市場では、まさに食うか食われるかの競争が激化している。

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