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アサヒ、「スーパードライ」依存経営の綻び…「2兆円」海外買収傾注で抱えた時限爆弾

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授

アサヒに求められる海外での“成果”

 アサヒは海外事業の強化をスピードアップし、成果の実現にこだわらなければならない。それに伴い、同社の構造が大きく変わることもあるだろう。グローバルにオペレーションを展開していくためには、それなりの経験とスキルを持った人材も必要になるだろう。

 実は、アサヒが海外事業の強化に注力するのは今回が初めてではない。1990年、同社は豪州のフォスターズ(カールトンの前進企業)を買収したが、効果が出なかったために1997年に手放した。今後は同じ失敗を繰り返すことはできない。今回も含めると、アサヒは海外資産の取得に2兆円を超える資金をつぎ込んでいる。さらなる海外事業の強化のためには、いち早くシナジー効果を実現して債権者と株主の安心を得ることが欠かせない。

 今後の展開を考えた際、もっとも重要なのは、中国市場でのシェア獲得だ。中国は、世界最大のビール消費国である。中国でも高級ビールへの人気が高まっている。中国市場に関して、アサヒは苦戦してきた。現在、同社はインベブから取得した欧州の高級ビールを中国に投入し、収益を獲得している。

 同時に、中国ではインベブも苦戦している。なぜなら、インベブは独禁法抵触の恐れを理由に、中国最大手、華潤ビールとの関係を解消せざるを得なかったからだ。インベブの虚を突いて、ハイネケンは華潤ビールと提携し、需要を取り込む橋頭堡を築くことができた。

 アサヒは買収に加え、戦略上重要な市場にて先行する先進国企業とのアライアンスを組むことを真剣に考えてよい。買収によって高付加価値のブランドを取り込みつつ、有力な企業とのアライアンスを強化して新興国開拓の手法を取得することは、アサヒが海外で収益を獲得するために重要な発想といえる。それは、買収にかかるコストを抑えつつ、より早期にシナジーの発揮を目指すためにも効果的だろう。同社が過去の発想にとらわれることなく、ダイナミックな発想を用いて海外でのシェアを獲得していくことを期待したい。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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