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世界最大のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」10年史【後編】

乃木坂46選抜メンバー出演ほどの感動はない…TIFが我々に提示してきた物語とは

文=ガリバー
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2017~2018年、中堅の相次ぐ解散発表とオーディションレースの導入

 この時期のTIFでは、解散・卒業していくアイドルを見送るための企画が連続する。TIFのみならず広くアイドルシーンの発展に貢献してきた中堅どころのアイドルが、次々と解散や活動休止を発表していったのだ。TIFにとってもっとも重要なアイドリング!!!の解散からも約3年がたち、グループアイドルのサイクルが一巡したこともあったのだろう。長年アイドルシーンに尽くした“功労者”をたたえようという空気も強かった時期のように思われる。

 オーディションレースの導入も、TIF出演者の新陳代謝を不活性化させるものとなっているように感じる。地方アイドル勢にとって、TIF出演への主な門戸がSHOWROOMでの課金競争となってしまっている側面があるのだ。地方アイドルがTIFに出演するには、地元での活動や東京遠征での関東ファンへのプレゼンス向上に加えて、SHOWROOMにおけるファンの有料アイテム購入金額やライブ動員数が大きな指標となる、ほかのアイドルたちとの“レース”に勝利する必要があるのだ。つまり、ライブパフォーマンスの向上というシンプルな目標以外の要素が付加されているわけである。

 TIFの開始当初はもっとアイドルシーンも狭く、主要アイドルの選定が主催者側でしやすかったはずで、シーンがここまで巨大化してしまった以上、地方アイドルにもフラットに出演機会を与えているという、試行錯誤の上での試みであることは理解できる。しかし、もう少し以前のように、主催者側のほうで主体的に地方アイドルをピックアップしてもよいのではなかろうか。

フェスに求められる“役割”の変化

 夏の代表的なアイドル系大型フェスである「アイドル横丁夏まつり!!」が2012年、「@JAM EXPO」と「関ヶ原歌姫合戦」がともに2014年から開始されていることを考えると、やはりTIFは、シーンにおける強固なコンセプトの構築に早い段階で成功していたことがわかる。その結果としてTIFは、2016年の301組をピークに、動員数は維持しながらも徐々に参加アイドル数を減らし、フェスとしての快適度の向上に努めているようだ。

 2018年には、一部ステージを撮影可能にするなど(スマートフォン限定)、ライブの持つ意味の世界的な変化や、アイドル現場での撮影会や画像の波及力の強まりを貪欲に取り入れるような取り組みも進めている。

2017年、テレビ局の力が可能にした乃木坂46選抜メンバー出演

 2017年のHOT STAGEにおける、乃木坂46 3期生のステージは非常に象徴的である。それは、AKB48が社会現象となった2010年という年に開始された観客動員数5000人ほどのフェスであるTIFが、その後、AKB48グループも取り込みつつ、2017年にはその象徴たる指原莉乃をチェアマンに迎えるといったアジャストを経ながらも、その時点における国内トップアイドルグループの出演を実現させた瞬間であった。

 もともと2017年の第8回TIFでは、乃木坂46 3期生の12人のみが出演する予定であった。もちろん、乃木坂46のグループとしてのTIF初出演なのであり、それだけでも十分に話題性はあった。ところが、TIFと同時開催されていたフジテレビ夏イベントの主題歌を乃木坂46が歌っていたことから、突如、白石麻衣ら選抜メンバーまでもがサプライズ出演したのだ。

 もちろんそれまでもTIFは、いくつもの名演を生んではいる。しかし、感動的なサプライズという意味では、2017年のこの出来事以上のものは今なおないのではないか。会場は、ただただ熱狂の渦に襲われていた。それはTIFが、大手テレビ局主催のものだからこそ可能になった、ウルトラCであった。

 しかし同時にそれは、決してこの2017年のみの例外的な措置だったのではない。2016年には、すでに快進撃を続けていた坂道シリーズから欅坂46が、デビュー年ながら複数ステージ出演したし、今年2019年にも、日向坂46や乃木坂46 4期生の出演が決定している。2010年のTIF開始当初、国民的アイドルとして君臨していたAKB48がTIFに出演することなど想像もつかなかった頃を思えば、隔世の感がある。アイドル界のトップランナーたちとTIFとの距離感は、10年前よりも確実に縮まっている。とりもなおさずそれは、質・量の両面でTIFがそれだけ巨大化したことを意味するだろう。この規模感とラインナップの幅の広さ、客層の幅の広さは、ほかのアイドルフェスの追随を許さない。

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2017年に発表された乃木坂46のアルバム『生まれてから初めて見た夢』(ソニー・ミュージックレコーズ)

 一方で近年のTIFが、メジャーグループの新たな核として、BiSHを始めとした“WACK勢”を中心に据えていることも、メジャーグループの入れ替わりをビビッドに反映しているという意味で、よい傾向であろう。

 また、日本から輸出されていったアイドル文化の“逆輸入”も注目ポイント。「恋するフォーチュンクッキー」をきっかけにタイの国民的アイドルへと成長したBNK48がTIFに出演したり、逆にTIFの派生イベントをタイで開催するなど、海外展開からも目が離せない。

 ちなみにアイドル業界の“老舗”ハロー!プロジェクトからは、真野恵里菜が2011年に初出演を果たして以降、多くのグループがTIFのステージに立ってはいる。しかし、いまだモーニング娘。だけはTIF出演を果たしておらず、ハロプロの“本丸”がいつ出演するのか、というのも今後のTIFの注目ポイントになるだろう。

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