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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

クラシックオーケストラ奏者の過酷な労働事情…3週間休みなしの楽員も!

文=篠崎靖男/指揮者
【完了・10日掲載希望】クラシックオーケストラ奏者の過酷な労働事情…3週間休みなしの楽員も!の画像1
「Getty Images」より

「今月は20日間も休みなく仕事をしていて、クタクタだよ」

 これは、いわゆるブラック企業ではなく、日本のオーケストラ奏者の話です。もちろん、オーケストラといえども、一般企業と同じように国が定めた労働基準法を守らなくてはならず、違反はできません。

 労働基準法では、1週間の労働は40時間以内となっています。一般的なオーケストラを例に挙げれば、リハーサル日とコンサート日とでは若干違いますが、1日の労働時間は5~6時間です。そうすると、休日がなかったとしても1週間の労働制限の40時間以内に収まってしまいます。つまり、演奏会に加えて、リハーサルや本番回数が多いオペラ公演などでも演奏し、3週間休みなしでぶっ続けで仕事をしても、ひと月に決められた休日数を取りさえすれば労働基準法違反にはならないわけです。しかもオーケストラは、時間が始業と終業時間がきっちりと決まっており、よほどのことがない限り、当日になって伸びたりはせず、基本的に残業はない職業なのです。

 指揮者の僕がこんなことを書いていると、音楽大学時代の同級生や親しい楽員から、すぐにお叱りの連絡が来そうです。

 現場での“労働時間”は法律の範囲内でも、自宅で練習をする時間は含まれていません。ひとつのポストが空けば、100名以上の応募者がオーディションに押し掛けてくるわけですが、そこでやっと合格した新米の楽員でも初日から、演奏したことのない楽譜をドーンと渡されるので、自宅での練習時間を加えれば、労働基準法どころではありません。

 指揮者も、ひとつの曲に莫大な時間をかけて研究することもあります。とはいえ、そもそも指揮者はオーケストラという会社に所属しているわけではなく、簡単にいえばフリーランスですから、そもそも労働基準法などはほとんど関係してきません。

 日本のオーケストラの楽員は、休みを取るのも大変です。「有給休暇を取れないのか?」と思うかもしれませんが、もちろん有給休暇はあります。しかし、オーケストラの場合、「トランペットが休んでいるから、フルートの人がカバーしてよ」というわけにいきません。また、責任感の強い日本人は、自分の勝手な事情で周りに迷惑をかけてまで休もうとはしません。

 ましてや、有給休暇を使い果たしているにもかかわらず、「ほかに条件の良い仕事があるから休みたい」「家族と温泉に行きたいから」などといった理由を事務局には言うなんて、絶対にできません。

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属

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