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木下隆之「クルマ激辛定食」

ル・マン24時間、トヨタの1・2位独占が“祝福されない”理由

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運命のいたずら

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 そんな思惑を乗せてレースが始まった。今年も小林がポールポジションを獲得。中嶋は2位。決勝もその順位で進行した。ガソリン給油やタイヤ交換のためのピットインを繰り返す。そのタイミングのあやで順位が入れ替わることはあるものの、常に小林がリードしながら淡々とレースが進行していった。

 そして残り1時間、誰もがこのままの順位でゴールするものだと確信した頃、悲劇が襲った。

 トップを快走していた小林のマシンが、チームメイトのS・ロペスのドライブ中にスローパンクチャーに襲われたのだ。スローパンクチャーとは、タイヤ空気圧の微細な低下である。「♯7」は緊急ピットイン。その時、中嶋は約120秒後方だ。素早く、スローパンクチャーであろうフロント右タイヤを交換し、コースイン。その時点で中嶋は12秒後方に迫っていたが、順位は変わらない。

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 しかし、悲劇は続く。フロント右タイヤを交換したものの、スローパンクチャーしていたのはそこではなく、別のタイヤだったのである。それによって、「♯7」はもう一度ピットインする羽目に陥った。作業を終えコースに復帰した時には、中嶋が前を走っていた。

 ちなみに、S・ロペスがマシンの異常に気がついたのは、計器に「スローパンクチャー」のアラームが点灯したからである。不思議なことに、センサーはどのタイヤが損傷していると表示されないというのだ。これほど高度なレベルで開発されているマシンにもアナログな点がある。

 両雄の走りには一点のミスもなかったが、最後は極めてアナログ的なマシントラブルが悲劇を演出した。そこにル・マン24時間の神様はいたずらをしたのだ。今でも小林可夢偉の気持ちを想像すると心が痛む。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員
「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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