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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

若者が知らない「成果主義」の過酷な現実…頑張りは評価されず、同期でも給料に数倍の差

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士
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 このようなやさしい母性原理に当たり前のように馴染んでいる日本の若者には、成果主義になると「頑張り」を示してもダメなのだということを理解していない者が多い。

(2)自分たち若い世代の給料が上がる?

 次に多くみられた勘違いは、「成果主義になると自分たち若い世代の給料が上がる」というものだ。これは、年功賃金だと無能な年配者でも高い給料をもらっているから、成果主義によりその無駄を省けば、自分たちに高い給料を払うことができる、という見方によるものだ。

 成果主義により、組織にとっての無駄を省くことができ、効率化できるというのはそうかもしれない。だが、そこには年配者が無能で自分たち若い世代は有能であるといった自己愛に満ちた錯覚がある。年配者にも、若い世代にも、人並み外れた成果を出せる人もいれば、たいした成果を出せない人もいる。

 ゆえに、成果主義になれば、若い世代の給料が上がるというわけではなく、若い世代の中でも、とくに優秀な人はどんどん給料が上がり、あまり優秀でない人は給料が上がらず、優秀でない人は給料が下がり、同じ年齢でも給料が数倍も開くというようなことになっていくのである。

 つまり、年齢に関係なく、とくに優秀な人が報われ、あまり優秀でない人はいつまでも安い給料のまま、というシステムということになる。同年齢であまり差がつかない平等主義に馴染んできたため、そのあたりの実感がない若者が多いようだ。

不適切営業に走らせる成果主義

 かんぽ生命不適切営業の実態が次々に暴かれつつあるが、これこそまさに成果主義の徹底によるものと言わざるを得ない。

 頑張りを評価するということになると、成果を出そうというところまで努力していないのに、頑張っているポーズを示すというやり方も通用してしまう。実際、日本の学校では、成績だけでなく取り組み姿勢も評価するようにとなっているため、「高校時代に勉強はできなかったけど態度をアピールすることで良い成績がついた」という学生の声をよく耳にする。そうした事態を防ぐには、成果主義的な仕組みも必要かもしれない。

 だが、とにかく結果がすべて、それによって査定され、収入が決まるとなれば、何がなんでも結果を出すように動くしかない。結果を出せなければ収入が減るといったシステムの中で追い込まれた者は、なりふり構わず成果を出すべく営業するしかない。

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