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京アニ被害者、なぜフジテレビは「天才」を「アホ」と誤報したのか?思考停止軍団の実態

写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト
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フジテレビの誤報

 この囲み取材の様子がこの日の夕方、フジテレビの報道番組『Live News it!』で放映され、仰天の出来事が起きる。本人の希望でAさんの氏名や顔は伏せられていたが、画面では「天才だったからね、あんな天才いませんよ。絵見たらわかる、シナリオ見たらわかる」などとAさんが語っている場面が紹介された。ところが、これらを語っている間の、画面のテロップでは「『らき・すた』監督の同級生も『あんなアホいない』追悼」となって流れているのである。これではAさんが「武本はアホやった」と言っていることになる。

 一体どういうことか。フジテレビは局内で約7分後にその間違いに気づき、慌てて奥寺健アナウンサーが「京都アニメーションのニュースの中でサイドバー、字幕が誤っていました。正しくは『あんな天才はいない』でした。大変失礼致しました」と謝罪し、頭をさげた。

 それにしても、なぜ「天才」が「アホ」に化けたのか。フジが報道各社に説明したところによれば、テロップを発注した番組制作スタッフが手書きした「天才」の文字が雑だったため、別のスタッフが「アホ」と読み間違えたのが原因という。その後のチェックも甘く、放送後に局内で気付いたという。 フジは「武本監督の名誉を傷つける誤りで、ご遺族の皆さま、取材に応じてくださった同級生をはじめ関係者の皆さまに、多大なご迷惑をおかけしたことを深くおわびします」(広報室)とコメントした。

 確かに「天才」を雑に書き飛ばせば、「アホ」に似たような字になるかもしれない。だが、仮に「アホ」と読めたからといって何も考えずにそのままテロップにしてしまうものか。親しい友人に病死などされた男が、葬儀などで「なんで俺より先に逝くんだ。大馬鹿野郎」などと泣きながら言うようなことはある。しかし今回の凄惨な事件の被害者に対しておよそ、そんな言葉で友人が悼むとも考えにくい。

 前例のない凄惨な事件を番組が扱っているなら、「アホ」などという侮蔑的な単語には神経質になるのが普通の報道者の感覚だ。フジは単に流れ作業をしているだけで、自分たちが何を報道しているのか、何も考えない「思考停止軍団」なのだろう。フジは「生放送で時間に追われていた」などとも弁明しているが、そういう問題ではない。この局の社員には、常識が完全に欠如している。

 考えられないような誤報に、ツイッターなどでは「あんな天才いないと答えたのに、あんなアホいないと表示。わざとだろ」「天才とアホ、どうやったら間違うんや」「間違ったのではなく故意でやったんだろう」「意図的に変えているとしか思えない。何考えてんだフジテレビ」などの声が相次いでいる。

 さすがに故意とは考えられないが、こうした反応が出ても仕方がない失態だ。いずれにせよ、フジテレビのお粗末さには仰天するしかない。国民が注視する前代未聞の重大事件を報じるときにすら、緊張感もない「思考停止」のフジに、もはやこの事件を報じる資格はあるまい。

(写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト) 

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