これを受け、絵に描いたような利益相反が起こることを懸念する声がマーケットに横溢した。ソフトバンクヤフーを連結子会社にしつつ、残りの株式の上場を続けるのだから、投資家の目には「親会社がいいとこ取りをしている」と映る。子会社株を100%保有せずに支配権を握るということは、残りの株式を流通させて、投資家から現金(キャッシュ)を得るのと同義である。

 ソフトバンクがヤフーの第三者割当増資を引き受け、ヤフーに4565億円の現金を注入する。その一方でヤフーはSBGが保有するヤフー株を買い取る。SBGは5265億円のキャッシュを手にするわけだ。ヤフーを経由してソフトバンクの資金がSBGに移動したことになる。SBGが子から孫会社経由で資金を吸い上げたと批判されても、金の流れを見る限り仕方がないことになる。

親・子・孫・曾孫の重層的な親子上場に綻び

 ソフトバンクの宮内謙社長兼CEOは、独立した上場企業として通信以外の新規事業に成長を求めるには、兄弟会社のヤフーとの関係を深めることがベストだと考えた。両社が共同出資するスマホ決済サービスのPayPay(東京・千代田区)で非通信サービス事業を伸ばすというのが新しい成長の柱になるはずだった。

 ところがグループ再編の過程で情況は一変した。ソフトバンクがヤフーを子会社にすると発表した日、PayPayはSBGから460億円の出資を受け入れることを明らかにした。この出資によりSBGはPayPay株式の50%を握ることになる。ヤフーとソフトバンクの出資比率は各50%から、それぞれ25%に低下する。PayPayはSBG直轄の子会社になったわけだ。SBGによるPayPayの子会社化は、PayPayがスマホ決済においてユーザー数、加盟店数ともにナンバーワンを目指すという宣言である。

 PayPayを非通信サービス事業の柱にする考えだったソフトバンクは、PayPayを親会社のSBGに奪われたため、急遽、新たな収益源を探さなければならなくなった。ソフトバンクはすかさず子会社化したヤフーに役員を派遣し、ヤフーに個人向け通販事業の強化を求めた。友好関係にあったヤフーとアスクルの関係が悪化したのは、SBGの再編構想でヤフーがソフトバンクの子会社に組み入れられたことが直接の原因だといわれている。

 SBGは中間持ち株会社を通じてソフトバンクの株式66.4%を保有。ソフトバンクはヤフーの44.6%の株式を握っている。ヤフーはアスクルの45.1%の株式をがっちり押さえた。投資家・孫正義氏が率いるSBGからみると、ソフトバンクは子、ヤフーは孫、アスクルはひ孫という関係になる。

 完全子会社とせず、子会社や孫、さらにはひ孫の企業を上場子会社に“仕立て上げた”ほうが、完全子会社にするより安上がりだからである。ところが、アスクルの社長や独立社外取締役を強制的に解任したことで、「親・子・孫・ひ孫」の重層的な親子上場の綻びが生じた。世界に冠たる大投資家となった孫正義氏も猛烈なバッシングを受けることになるのか。もっとも、剛腕の孫氏だけに、「これからは少数株主の利益を保護します」と言って志を曲げたりはしないだろう。

(文=編集部)

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