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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

暑さで大量の発汗→知らぬ間に脱水症、「単なる水」を飲むのは危険!脳機能障害の恐れ

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
【完了】暑さで大量の発汗→知らぬ間に脱水症、「単なる水」を飲むのは危険!脳機能障害の恐れの画像1
「Getty Images」より

薬剤師の視点で社会を斬る

 暦の上では秋となっても全国各地で猛暑となる日が続き、熱中症の疑いで救急搬送される人が相次いでいる。熱中症と聞くと、屋外での活動時に起きるとイメージしがちだが、熱中症による重症例や死亡例をみると、屋内の例も多い。まだまだ猛暑が続く日本、熱中症対策は重要な危機管理のひとつといえるだろう。

熱中症と脱水症

 熱中症とは、高温多湿な環境下において体内の水分・塩分のバランスが崩れ、体がその環境に適応できなくなり、本来持っている調整機能が破綻して発症する障害の総称である。熱中症では急性型の脱水症が起きており、汗により水と電解質で構成される体液が減少する。電解質を含む経口補水液などを摂取しなければ脱水症はさらに進み、血液の量も減る結果となる。そうなると血圧も下がり、血液によって必要な栄養素を体の隅々に運ぶことができなくなるばかりか、老廃物を排出する力も低下するため、体は危機的状態となる。脱水症の悪化に伴い、体温上昇、めまい、倦怠感、けいれん、意識障害などの症状を引き起こし、死を招くこともある。

汗をかいたら水分補給を

 猛暑日には、ほんの数分歩いただけで大量の汗をかくが、暑いから汗をかくのは当たり前と軽く考えるのは禁物である。一般的に、体重の3%の体液が失われれば、軽度の脱水症といわれる。さらに、体液減少が3~9%で中度、10%以上では重度の脱水症となる。大量の発汗は、脱水症を招く危険サインと捉え、こまめな水分補給をしていただきたい。

 体内で脱水が進んでいないかを確認できるセルフチェックがある。以下のような症状があれば、脱水症のリスクが高まっていると考えられる。

・爪を押す・・・爪を押すと白くなるが、ピンク色に戻るまで3秒以上かかる
・口腔内の感想・・・唾液減少、乾燥、舌の赤み?亀裂など
・皮膚・・・ハリの消失
・手足など抹消の冷え
・体重の減少
・微熱

 屋外でのスポーツや仕事は、できる限り風通しの良い環境をつくり、体調不良を感じれば中止する勇気が必要である。自分の体は自分でしか守れない。先日も、着ぐるみを着てアクションを行うアルバイト中に熱中症で青年が死亡するというニュースがあった。早い段階で止めることはできなかったのかと悔やまれる事故である。

 また、大量の飲酒は禁物である。アルコールの代謝は体内の水分を奪うため、大量の飲酒はそれだけで脱水症を引き起こす。くれぐれも注意してほしい。

喉が渇く前に水分補給

 喉が渇いてからの水分補給では遅く、渇く前に水分補給を心がけていただきたい。また、尿の回数か゛少なく、尿の色か゛普段より濃い状態は、体内の水分か゛不足しているサインなので、意識してみてほしい。

 水分補給については、脱水が起きた状態で単に水を飲むのは危険である。脱水時に大量の水を飲むと、細胞の外の体液が薄まってしまい、低ナトリウム血症となり脳機能障害を引き起こすことがある。水分補給には経口補水液(ORS:oral rehydoration solition)が好ましい。軽度の脱水症であればスポーツ飲料でも代用できるが、スポーツ飲料はORSよりも電解質が少なく糖質が多いため、脱水時の水分補給にはORSが最適である。暑い日には店頭の経口補水液が品薄になることもあるが、家庭でも手軽に経口補水液がつくれるので、以下のレシピを参考にしてほしい。

【経口補水液レシピ】
水 1リットル
砂糖 20~40グラム
塩 3グラム
※レモン果汁などを加えるとさっぱりとして飲みやすい

 適切な水分補給で暑い夏を乗り切っていただきたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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