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藤和彦「日本と世界の先を読む」

【GSOMIA破棄】韓国の暴挙、朝鮮半島へ中国と米国が軍事介入の可能性も

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員
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 当時内閣情報調査室に勤務していた筆者はその根拠について調べたことがあるが、韓国側が示したデータのほとんどは日本統治下時代に日本企業が行った、非常に大雑把な調査結果に基づいていたことを記憶している。鉱物資源の埋蔵量は、採掘の持続性や経済性などの観点から精査していくと2桁以上その量が減少していくのが当たり前であることから、北朝鮮に鉱物資源が存在したとしても、その価値は相当割り引いて考える必要があるだろう。

「一寸先は闇」の朝鮮半島

 仮に北朝鮮の鉱物資源が期待外れであったとしても、「朝鮮民族の統一」という大義は揺らぐことはない。しかし約7600万人の人口を擁する大国が朝鮮半島で誕生することを国際社会は容認するだろうか。

 朝鮮戦争は1953年7月に戦火は収まったが、停戦状態のまま現在に至っている。戦争の実質的な当事者であった米国や中国などにとって、朝鮮半島は「現状維持」以外の選択肢はないという状況は現在も変わっていない。米国との国交正常化を悲願と位置づける北朝鮮にとって、トランプ政権の誕生は千載一遇のチャンスである。北朝鮮の後ろ盾は中国とされているが、北朝鮮にとって中国は最も嫌いで、かつ、最も恐るべき隣国である。

 トランプ政権は貿易紛争を激化させる中国への牽制という観点からか、北朝鮮との首脳外交を活発化させている。米国の動きに乗じて「朝鮮民族の統一」を夢見ているとされる文在寅大統領が北朝鮮との融和に突き進めば、中国は黙ってみているわけにはいかない。

 紀元前2世紀に漢が楽浪郡を設置して以来、朝鮮半島は中国歴代王朝の帰趨を制する「藩塀」の役割を果たしており、中国としては朝鮮半島に敵対勢力が進出することはなんとしてでも阻止しなければならない。朝鮮戦争以来「血の同盟」を結んできた北朝鮮までが米国に靡けば、中国は朝鮮半島に軍事介入する可能性があると筆者は懸念している(1949年に建国したばかりの中国は、国際社会の予想に反して朝鮮半島に大量の義勇軍を投じた経緯がある)。

 朝鮮半島での軍事演習にさえ否定的なトランプ大統領が、朝鮮半島での戦争開始を決断するとは想像しずらい。だが、1950年1月に「朝鮮半島には軍事介入しない」とするアチソンラインを設定したにもかかわらず、これを好機と捉えた金日成が韓国へ軍事侵攻すると、手のひらを返すようにトルーマン大統領が米軍の投入を決断したという前科がある。

 地政学の教えによれば、ランドパワーとシーパワーが激突しやすい半島で戦争が起きやすいとされている。紛争当事国の思惑がすべて外れた結果、意図せざる大戦争に発展したのが朝鮮戦争である。

 このように朝鮮半島は「一寸先は闇」であるが、文在寅大統領はすでにパンドラの箱をあけてしまったのかもしれない。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

 

藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 経済産業研究所上席研究員
2021年 現職
独立行政法人 経済産業研究所

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