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東電、原発事故被害者への「賠償の誓い」反故…賠償金を値切り、和解手続き打ち切り

文=明石昇二郎/ルポライター

 時効が近づくなか、ADR和解案が尊重されないようでは、「最後の一人まで賠償貫徹」どころか、賠償の網からこぼれ落ちる被害者が続出する。その一方で、大事故を起こした加害企業は恥も外聞もなく税金で延命を果たす。政府の“加害企業救済”方針は、21世紀最大のブラックジョークになりそうだ。

 日本弁護士連合会(日弁連)は、賠償請求権の時効を20年へと再延長するための立法措置を国に要望する方向で検討を始めている。また、被害者を多く抱える自治体でも、時効延長を求める声が上がり始めている。

 原発事故から8年以上が経過した今、なぜこんなことになってしまったのか。

強制権限がないADRセンター

 福島第一原発事故による損害賠償請求では、東電との直接交渉や民事裁判のほか、国のADRセンターを利用することもできる――はずだった。

 原発事故でADRの制度が設けられたのは、福島第一原発事故で被害を受けた人の数があまりにも多かったからだ。被害のすべてを裁判所で裁くとなると大混乱に陥り、被害者の救済も遅れるとして、迅速な解決を目指し、国と法曹界が協力して同制度はスタートした。

 ADRセンターにおける仲介費用は無料。ADRセンターが個別の事情に応じた和解案を提示して、東電との賠償交渉を仲介してくれる。通常であれば半年程度で和解案が示され、解決を図ることを目指した。ただし、和解が不成立に終わった場合は、被害者は裁判を通じて損害賠償請求することになる。一審、控訴審、上告審を経て判決が確定し、実際に賠償が果たされるまでには、気の遠くなるような歳月がかかることになる。

 そして事故から8年後の今、ADRセンターが和解を打ち切るようになった。こうなった最大の原因は、東電を従わせる強制権限がADRセンターにはない――ということに尽きる。

 東電と和解できず、賠償が果たされなかった被害者は、裁判をするか、賠償請求を諦めるかの瀬戸際に立たされている。ADRでの協議で東電との間で長年積み重ねてきたやり取りや証言、証拠の数々も、新たに始める裁判では一からやり直さなければならない。

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23:30更新
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