工藤貴宏「幸せになるためのクルマ選び」

トヨタ「スープラ」発売直後に納車半年待ちに…“儲からない”スポーツカーをつくり続ける理由

 スポーツカーも同様に、サーキットで極限の走りをしても壊れないメカニズムや、しっかり路面をとらえる強靭なボディやサスペンション、パワーを引き出すエンジンのつくり方などの技術が磨かれ、それはスポーツカー以外の市販車にも波及する。スポーツカーづくりはエンジニアの成長を促し、自動車メーカーの技術力を高めるのだ。

 日頃から口癖のように「もっといいクルマづくり」と語り、カーガイ(生粋のクルマ好き)として知られるトヨタの豊田章男社長は「いいスポーツカーを量産できるかどうかは、自動車メーカーの『モノづくりの力』のひとつのバロメーターだと思う。いいスポーツカーをつくるためには、世界有数のレースに参戦して、ライバル達と対等以上に戦い、そこで鍛えられた人と技術を活かして、クルマをつくれないといけない」と、スポーツカーをつくる意味を説明する。

 確かに、新型スープラはドイツのBMWとの協業で生まれたので、生粋のトヨタ車とは言いにくい。しかし、走りの味付けはトヨタが行っているし、BMWのクルマづくりのノウハウを知ることもできたので、トヨタのクルマづくりをレベルアップする要素は十分にあるのだ。

 そして、もうひとつが自動車メーカーにおけるイメージリーダーとしてのスポーツカーの役割だ。

「最後に残るクルマは“FUN TO DRIVE”」

 スポーツカーを大切にすることのヒントは、かつて豊田社長が語った、そんな言葉に集約されている。これからのクルマは、カーシェアリングなど共同所有の方向に進むのは間違いない。しかし、豊田社長は「クルマを愛する一部の人々はそれでも自分でクルマを所有することを好み、個人所有車として最後まで残るジャンルがスポーツカー。トヨタは、そんな人たちに愛されるような自動車メーカーになっていきたい」と語っている。

 それを補うのが、トヨタの副社長で社長同様にカーガイである友山茂樹氏の以下の言葉だ。

「『自由に、自分の意志通りに移動したい』『もっと速く走りたい』『もっと遠くに行きたい』。こうした人間の欲求は普遍的なものであり、それを実現してくれるクルマへの人々の感情は熱く、心ときめくものがある」

 そんな人たちに向けてトヨタという存在を印象付けるのが、スポーツカーの役割だと考えているのだ。

工藤貴宏/モータージャーナリスト

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆中。心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。
執筆媒体はモーターファン別冊新車速報シリーズ(使い勝手チェック及びバイヤーズガイド担当)、ガルヴィ(新車紹介記事担当)、カーグッズマガジン、RESPONSE、&GP、goo-net.com、gazoo.com、くるまのニュース、clicccarなど。国産車を中心に新車から中古車まで幅広く原稿を手掛ける。
本当はスポーツカーが好きだけど、ミニバンや軽自動車も得意。
現在の愛車は10年乗ったポルシェ・ボクスターSから乗り換えたルノー・ルーテシアR.S.とマツダ・プレマシー。

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