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セルフ式ガソリンスタンド一般化で車両トラブル増加…日常点検はGSスタッフに任せよ

文=萩原文博/自動車ライター
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今や全ガソリンスタンドの3割を占めるともいわれるセルフ式ガソリンスタンド(写真はすべてイメージです)

 今年のお盆休みにも、クルマで帰省し、不運にも大渋滞に巻き込まれてしまった人も多いだろう。交通集中による渋滞だけでもイライラが募るのに、それに加えてクルマの故障や事故が原因の渋滞が重なれば、イライラはMAXレベルに高まるはずだ。しかし今回は、渋滞の被害者だったあなたでも、いつ渋滞の加害者になるかわからない、という話である。そういうことにならないために自分が何をすべきなのか、ということを考えてみたいと思う。

 ロードサービスを行っている日本自動車連盟(JAF)による救援に関するデータの中で、2018年のお盆時期に発生したロードサービス救援依頼の内容を見てみると、一般道における第1位が「過放電バッテリー」、すなわちバッテリー上がりだ(2万332件))。そして2位がタイヤのパンク、バースト(1万1640件)、3位が破損/劣化バッテリーとなっている(4528件)。そして、高速道路における救援依頼で最も多いのがタイヤのパンク、バースト(1292件)、2位が燃料切れ(381件)、そして3位がバッテリー上がり(218件)という結果となっている。

 このように、一般道、高速道路で順位が異なるものの、バッテリー上がりやタイヤのパンク、バーストが上位を占める結果となった。こうしたアクシデントをユーザーが防ぐことはできないのかというと、多少なりともクルマに関する知識のある人ならおわかりだろうが、実はまったくそんなことはない。どれも、ユーザーがしっかりと点検していれば防げるものばかりだ。

 以前は、法令上、自家用車はクルマを使用する前に1日1回の運行前点検を実施することになっていた。現在でも、事業用のトラックやバスでは義務付けられている。しかし法改正により現在では、「車の使用者は走行距離や車の状態などから判断した適切な時期に、車の点検をしなければいけない」(道路運送車両法)と、「適切な時期」という表現で緩和。国土交通省のホームページを見てみると、この「日常点検」に関する項目は15にも及び、

1、ブレーキペダルのチェック
2、駐車ブレーキのチェック
3、エンジンのかかり具合・異音
4、エンジンの低速・加速の状態
5、ウィンド・ウォッシャの噴射状態
6、ワイパーの拭き取りの状態
7、ブレーキ液の量
8、冷却水の量
9、エンジンオイルの量(汚れ)
10、バッテリ液の量
11、ウインド・ウォッシャ液の量
12、ランプ類の点灯・点滅
13、タイヤの空気圧
14、タイヤの亀裂・損傷の有無
15、タイヤの溝の深さ

が挙げられている。

 このうち1〜6は運転席で確認でき、12、14〜15は目視で行うことができる。しかし、7〜11はボンネットを開けないと確認できないし、13の空気圧は専用の器具がないと計測・調整ができない。現代の自動車ユーザーの中には、「ボンネットなんて開けたことがない」なんて人もいるだろう。で、そういう人ほど、先述した旅先でのアクシデント等に見舞われる可能性が高くなるのである。

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タイヤの空気圧チェックも重要だ。

セルフ式ガソリンスタンドの増加でアクシデントが増えた?

 法令上は確かに、日常点検はユーザーが行うものとなっているが、以前は事実上、燃料給油のために日常的に立ち寄るガソリンスタンドのスタッフが、代わりにやってくれていた部分が大きかった。給油に立ち寄ればスタッフが寄ってきて、「エンジンルームを見ましょうか?」などと声をかけ、ユーザーに代わってチェックしてくれていたのだ。当然ながらガソリンスタンドのスタッフは毎日クルマを見ているプロであり、タイヤを見れば、キズや空気圧の減少や溝の摩耗などを認識し、フォローしてくれるということが、全国どこのガソリンスタンドでも日常的に行われていたわけだ。

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「エンジンルームを見ましょうか?」

 しかし最近では、セルフ式のガソリンスタンドが増えている。スタッフが給油や簡単な点検までも行ってくれるフルサービスのガソリンスタンドが減少し、代わりにユーザー自身が給油を行うセルフサービスのガソリンスタンドが増えているわけだ。そもそもガソリンスタンド自体の数が減少傾向にあるわけだが、全国で3万弱とされるガソリンスタンドのうち、今では実に30%以上がセルフ式のガソリンスタンドだとされている。となれば、バッテリー上がりやタイヤのパンク、バースト等の、まさにちょっとした日常点検で防ぐことのできるアクシデントは、セルフサービスのガソリンスタンドの増加が引き起こしたものと言っても過言ではないのだろう。

 では、なぜセルフ式のガソリンスタンドが増えたのか。まず、1998年、消防法の改正でセルフ式が解禁となる。さらに2010年6月の同法改正により、ガソリンスタンドの地下に埋蔵された古い燃料貯蔵タンクの改修が、2011年1月末月までに必要となった。このタンク改修には約3000万円の費用が必要とされ、たとえ助成金を受けたとしても、スタンド側はかなりの自己負担を強いられた。

 しかも、仮に思い切って改修したとしても、昨今のクルマの燃費性能の向上等によってガソリンはかつてほど売れなくなっており、設備投資の回収見込みは立たない。こうしたわけで、多くのガソリンスタンドが廃業へと追い込まれ、さらに改修したガソリンスタンドに関しても、人件費を削るため、セルフサービスへの営業形態変更を余儀なくされていったのである。

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急激に増えつつあるセルフ式ガソリンスタンド

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