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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

中国、米ドルの買い支えを中止か…米国経済が窮地に、トランプ氏の交渉術が手詰まり

文=加谷珪一/経済評論家
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 米国にとって中国の台頭は脅威だが、多くの米国人はビジネスの相手として中国をうまく利用したいと考えていた。一方、中国は国際社会において、途上国として扱われる状況から早く脱却し、主要国としての処遇を受けたいと強く願っていた。オバマ政権は中国のこうしたプライドをうまく利用し、「もし主要国としての処遇を受けたいのであれば、自国市場を開放し、フェアな形で人民元を国際化する必要がある」と中国に迫っていた。為替についても「大国であるならば、相応の価値が必要であり、ある程度の人民元高を容認する必要がある」というスタンスだった。

 中国には、どうしても大国になりたいとの思いがあり、ドル安を望む米国の意向をほぼ受け入れ、人民元を高めに誘導。その水準で徐々に人民元を国際化する方向性で準備が進められてきた。

中国は米ドルの買い支えをやめただけ

 人民元を高めに推移させたほうが、米国の利益が大きく、そのためには自国の輸出産業が多少、犠牲になっても構わないという中国側のスタンスは、トランプ政権になっても継続していた。トランプ政権は、対中制裁を次々に発動してきたが、中国側も、一連の制裁はトランプ流の交渉術であり、どこかで妥協点が見いだせると考えていたはずだ。

 トランプ氏も当初はそのつもりだったのかもしれないが、今回はトランプ氏が完全に中国側の出方を見誤った可能性が高い。全製品への関税をチラつかせれば中国側が妥協すると踏んだものの、中国はこれに応じず、長期戦に持ち込んだほうがよいと判断してしまった。

 中国側は、保有する外貨準備を失ってまで継続してきたドル売り介入を止めた可能性が高く、結果として人民元が下落。トランプ政権にとっては困った結果になってしまった。米国は中国を為替操作国に認定したものの、この措置は実質的になんの意味も持たない。中国は確かに為替を操作していたが、それは自国通貨安ではなく、自国通貨高にするための誘導であり、為替相場を市場に任せればさらに元安となる可能性が高いからである。

 このまま元安が続けば、関税で苦しんでいる中国企業の収益が改善するので、中国にとっては時間稼ぎができる。来年の大統領選までに成果を出す必要に迫られているトランプ氏は、逆に交渉の選択肢を狭めてしまったといってよいだろう。

 では、下手を打ったトランプ氏は今後、どのような手段を講じるのだろうか。

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