平林亮子と徳光啓子の「女性公認会計士コンビが教える、今さら聞けない身近な税金の話」

外貨預金の損失で「節税」できる?

 ちなみに、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の損失は、他の所得と損失を相殺する「損益通算」という仕組みを利用できますが、雑所得に分類される損については損益通算はできません。雑所得で損失が発生したとしても残念ながら他の所得から差し引くことができませんので、注意してくださいね。

 年収500万円の会社員(独身)で、外貨預金による損失が20万円、それ以外の雑所得(例えば、副業として受け取った原稿料や講演料)が50万円、というケースを考えてみます(基礎控除以外に所得控除・税額控除はない前提です)。

 損失を考慮する前の税金は、次のように計算します。

・給与収入500万円 ー 給与所得控除154万円 = 給与所得346万円

・(給与所得346万円 + 為替取引以外の雑所得50万円) ー 基礎控除38万円 = 所得358万円

・所得358万円 × 30%(所得税率20% + 住民税率10%) - 控除額42.75万円 = 税金64.65万円となります。

※厳密には住民税率を計算する際に所得計算は、所得税法上の計算方法と一致しませんが、ここでは説明を簡略化するため、所得税法の計算と同じように所得計算をしています。

 次に為替差損を考慮する場合には、次のように計算します。先ほど計算した所得358万円から、為替差損を差し引きます。

・考慮前所得358万円 - 為替差損20万円 = 所得338万円

・所得338万円 × 30%(所得税率20% + 住民税率10%) ー 控除額42.75万円 = 税金58.65万円となります。

 つまり、損失を考慮した場合には、税金が6万円安くなるということです。外貨預金で損をした分は、他の雑所得から差し引くことしかできませんが、差し引くことができれば、それなりの節税効果はあると思います。

 為替差益が出た場合(外貨預金で得をした場合)には、税金がかかることになります。所得税の税率は、所得が高ければ高いほど税率が上がりますので、収入がある人とない人によってかかる税金が変わります。たとえば、(1)年収500万円の独身会社員で、60万円の為替差益が発生した場合には、税率が30%(所得税率20%+住民税率10%)。一方で、(2)所得ゼロの方が為替差益60万円を得た場合には、税率が15%(所得税率5%+住民税率10%)となります。

 税金にすると、為替差益にかかる税金は、(1)18万円(60万円×30%)、(2)3.3万円(<60万円-基礎控除38万円>×15%)となり、収入の多寡によって税金に差が出ます。

平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表

1975年千葉県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部地理学科出身。
企業やプロジェクトのたち上げから経営全般に至るまで、あらゆる面から経営者をサポートしている。
また、女性プロフェッショナルに関するプロジェクト「SophiaNet」プロデューサーを務めるなど、経営サポートに必要な幅広いネットワークを持つ。
さらに、中央大学商学部客員講師として大学で教壇に立つなど、学校、ビジネススクール、各種セミナーなどで講義、講演も積極的に行っている。
『決算書を楽しもう!』 『「1年続ける」勉強法―どんな試験も無理なく合格!』(共にダイヤモンド社)、『相続はおそろしい (幻冬舎新書)』(幻冬舎新書)、『1日15分! 会計最速勉強法』(フォレスト出版)、『競わない生き方』 (ワニブックスPLUS新書)、『5人の女神があなたを救う! ゼロから会社をつくる方法』(税務経理協会)など、著書多数。
合同会社アールパートナーズ

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