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中国の巨大コーヒーチェーン「ラッキンコーヒー」現地レポ【前編】

スタバを凌駕する中国「ラッキンコーヒー」…創業1年半のスピード上場と中国市場の特異性

取材・執筆=楯雅平、編集=河鐘基【ROBOTEER,Inc.】
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ラッキンコーヒーの店内(写真は筆者提供)

巨大マーケットが生んだ怪物チェーン

 中国には、人口14億人を擁する世界最大の巨大市場がある。ここ最近、中国関連のニュースといえば、米国との「貿易戦争」や西側5Gネットワークからの「村八分」といったネガティブなニュースを目にすることが多い。しかし中国国内に目を向ければ、そこには依然として巨大マーケットが存在し、とてつもない速度で成長する怪物企業が生まれている。今回の記事で取り上げる飲食チェーンのラッキンコーヒー(瑞幸咖啡/Luckin Coffee)も、そんな巨大中国市場が生み出した企業のひとつだ。

 スタートアップ企業がコーヒーチェーンの経営をすると聞いて、「有望株だ」と思う人がどれだけいるだろうか? そもそも、チェーン店経営というビジネスモデルに目新しさはないし、中国市場ではすでにスターバックスやコンビニエンスストアがコーヒー販売を行っている。個人経営のカフェで細々と続けるならいざ知らず、上場を目指す規模ともなれば、新興企業に勝ち目があるとはとても思えない。しかし、そのような厳しい市場へ果敢に挑んだラッキンコーヒーは、設立からわずか1年半で、米国ナスダック市場に上場を果たしてみせたのだ。

前代未聞のスピード、IPOで600億円超を調達

 ラッキンコーヒーを創業し、現在CEOを務めるのは銭治亜(Zhiya Qian)という女性経営者。北京大学でMBAを取得し、配車サービスを提供する「神州優車」の創業メンバーとして経営の経験を積んだ後、40代でラッキンコーヒーを起業している。彼女たちが福建省の南部にある廈門(アモイ)市にラッキンコーヒーを設立したのは、2017年10月のこと。北京と上海に1、2号店をオープンしたのは2018年1月で、そこから約1年半で中国全土に2300店舗を展開し、2019年5月には米国ナスダック市場にIPO(株式店頭公開)を果たした。創業からわずか19カ月の電撃上場である。

 参考までに、騰訊(テンセント)が香港証券取引所に上場するまでに要した期間は約6年、阿里巴巴集団(アリババ)が約10年である。IT系企業は他の業種と比べれば比較的早く上場できるといわれているが、対して実店舗の展開を要する飲食系の企業は、成長により長い時間がかかるのが普通だろう。それを踏まえると、ラッキンコーヒーが2年未満で上場したことのすごさがおわかりいただけようというものだ。

 なお、上場時の(2019年5月16日)の公募価格は1株あたり17USドルで、記事作成時点(2019年6月)の株価は17~21USドルの間を推移している。1株あたり17USドルとした場合、時価総額は5億6100万USドルを超えていることとなる。

 これから先、ラッキンコーヒーは2019年末までに4500店舗のオープンを目指すという。なお、ライバルのスターバックスが北京に1号店をオープンしたのが1999年のことで、そこから約3000店舗に拡大するのに要した期間は約20年だ。それと比べると、ラッキンコーヒーの出店ペースがいかに速いかがよくわかる。このままの勢いで出店が続けば、スターバックスが20年かけて達成した店舗数を、ラッキンコーヒーは2年前後で超えることになる。

急成長の原動力

 ラッキンコーヒーがここまで早く成長できた背景には、中国のコーヒー市場の急速な拡大がある。同国におけるコーヒー消費量の伸び率は前年比18パーセントで、世界平均の2パーセントを大きく上回った。それでもなお、1人あたりに均すと年間消費量はわずか4杯でしかなく、今後の伸びしろは大きいといえる。14億人という膨大な中国人の嗜好が少し変わるだけでも、そこに生まれる市場は巨大なのだ。

 とはいえ、マーケットの成長の波に乗った「だけ」で上場できるというものではない。次回記事では、「なぜラッキンコーヒーがこうも急速に成長できたのか?」という問いの答えを、現地取材レポートと併せて見ていきたい。

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河鐘基

河鐘基

1983年北海道生まれ。株式会社ロボティア代表取締役。テクノロジー専門ウェブメディア「ロボティア」を運営。著書に 「AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則」(扶桑社新書)、「ドローンの衝撃」(扶桑社新書)、「ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実」(光文社)。訳書に「ロッテ 際限なき成長の秘密」(実業之日本社)、「韓国人の癇癪 日本人の微笑み」(小学館)など。

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