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松崎久純「ビジネスパーソンの自己啓発」

多くのビジネスパーソンが無意識に“口にして”、陰で大恥をかいている言葉

文=松崎久純/グローバル人材育成専門家、サイドマン経営代表
多くのビジネスパーソンが無意識に“口にして”、陰で大恥をかいている言葉の画像1
「gettyimages」より

 今回は新入社員研修など、企業で若手従業員の研修講師をしていて気になることを書いてみたいと思います。それは若い人たちのなかに「人見知りです」と言う人が多いことです。彼らは、特に聞かれているわけでもないのに、何かのタイミングでそう口にします。

 きちんとした受け答えができなかったり、自らの振る舞い方について合格点が出せないと思うときに、対人コミュニケーションが不得意という意味で、自分は「人見知り」な性格だと言うのです。

知らず知らずに恥ずかしいことを口にしてないか

 彼らは自分たちの対人コミュニケーションスキルの不足に気づいたとき、「人見知り」という枠に自分を当て込んでみせることで、その未熟さを正当化、あるいは指摘されないようプロテクトしているように見えます。誰にでも得手不得手はありますから、「人見知りであること」や「対人コミュニケーションが不得意なこと」自体を悪く言いたいのではありません。しかしながら「人見知り」などと安易に述べるのは、ビジネスパーソンとしての自覚に欠けると言わざるを得ません。

 こんなことをもし社外で話すような部下がいれば、上司も恥ずかしい思いをすることになるでしょう。あいさつ、受け答え、話し方のスキルが身に付いていないことや、それに対して社内の教育も至らないこと、ましてや自分は「人見知り」などと言うことは、かなりみっともないことと自覚すべきです。

 社外だけでなく、社内でもそうしたことは安易に口にすべきではないでしょう。対人コミュニケーションのスキルは、社会人であれば訓練して身に付けるべき基本的スキルだからです。

幼稚な振る舞いでも許される人

 筆者がこれまで一緒に仕事をした人のなかには、自分からあいさつができないだけでなく、お礼を述べることもできない、人見知りという括りでは収まらないような人もいました。40歳前後だったその人は後輩たちに対して威張ることもあったり、他愛もない人の失敗(たとえばPCの操作ミス)を笑ったり、人をばかにして喜んでいたりする人でした。

 大分変わっていることには誰もがすぐに気づきますが、仕事の後、皆でレストランで食事をしていて、取引先の人たちが偶然同じ店に入ってきても、かたくなに気づかない振りをして、周囲がかなり促さないとあいさつもしようとしないのです。そうした様子には取引先の人たちもすぐに気づき、皆が恥ずかしい思いをするようなこともありました。

 しかしながら、この人に対して、周囲の人たちは常識のある振る舞いは期待していませんでした。それは彼と付き合えば、それをあきらめざるを得ないことがすぐにわかるのも理由ですが、最も大きな理由は、その人が個性的で一風変わった芸術家であったことです。商用のアートが専門ではありましたが、グラフィックデザインでは他の人には真似のできないクオリティの高い作品を次々とつくり上げ、彼のおかげで高額の受注もできていたのです。

 そのため周囲も、その人によい絵を描く以外のことは期待しておらず、社会人としての常識などは求めていなかったのです。彼には失礼ですが、常識的で整った人格に、芸術的な才能がくっついているのではなく、優れた芸術作品はいろいろと欠けているものがあってこそ生まれるのかと思えてしまう人でした。それゆえに周囲も彼の未熟な振る舞いは好きではないのですが、仕方のないこととして受け入れていたのです。

ビジネスパーソンは常識ある振る舞いを

 しかし、このような例はあくまでも例外として捉えるべきです。前出の筆者の知り合いのような振る舞いは、普通のビジネスパーソン、すなわち周囲と上手にコミュニケーションを取りながら仕事をすべき人が真似をしてよいことではありません。自分が「人見知り」と述べることもNGになります。

 本当に人見知りであいさつも苦手、人との会話に大きなストレスを感じることがあるとしましょう。その場合でも「人見知りです」と口にするのは、たとえば接客業であるホテルのフロント係が「接客は苦手で、本当は好きではない」と口にするのと同じようなことです。もしそんな発言を聞いたら、そのホテルの客や他の従業員は、そんなことは口にせず、やるべき仕事を一生懸命にやってほしいと思うのではないでしょうか。

 もし、この文章を書いている筆者が「本当は書くことは苦痛で好きではない」と言ったら(実際そうしたことはありませんが)、読者は興ざめするはずです。そして、なぜそんな話をするのだろうと、不快にも思うのではないでしょうか。

 どんな仕事でも「苦手です」などとは言わず、そうであればなおさら、上手くできるように黙って努力するべきでしょう。社会人として必要な対人コミュニケーションのスキルは、これとまったく同じように捉えるべき事柄なのです。

できるだけ早めに見直してみよう

 ここでは自分が人見知りだと思っている人に、必ずしもそれを本当に直さなくてはいけないと述べているのではありません。本当に感じていることよりも、むしろビジネスパーソンとして相応しい言動や振る舞いを意識すべきと言いたいのです。そうすることが職場全体のモラルにもよい影響を与えます。苦手意識はあってもいいですから、話し方などのスキルアップには、できるだけ早めに取り組んでみましょう。

 冒頭に述べた通り、「人見知りです」は若手従業員の研修でよく耳にします。彼らは主に10代後半から20代の人たちです。彼らはまだ周囲から注意をしてもらえる年代で、企業としても、彼らに必要なスキルを学んでもらいたいため、研修に参加させています。

 しかし、彼らよりも上の世代の人になればなるほど、周囲は注意を与えることを躊躇してしまうものです。あいさつができないとか、受け答えの仕方がわるいと(たとえば)40代以上の人たちに言うのは余程のことであって、そうした人たちはもう注意してもらえないのが普通と考えるべきです。

 そのため彼らは叱られることはありませんが、代わりに「あいさつのできない人」「きちんとした振る舞いは期待できない人」と認識されてしまい、それ以上求められることがなくなります。つまりどこかの段階で、周囲にあきらめられてしまうのです。

 誰にでも苦手なことはあるものですが、ビジネスパーソンとして必要なスキルであれば、苦手とは口にせず、できるだけ早く改善に取り組んでみましょう。どのくらい努力しているのかも周囲は見ているものです。前向きに取り組んでいれば、周りからも前向きなアドバイスを得られるようになるでしょう。

松崎久純/グローバル人材育成専門家

松崎久純/グローバル人材育成専門家

サイドマン経営代表

企業の海外赴任者や海外拠点の現地社員を対象にグローバル人材育成を行う専門家。サイドマン経営・代表。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科非常勤講師。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ 成功するための真の要因』(光文社)、『英語で学ぶトヨタ生産方式 エッセンスとフレーズのすべて』(研究社)、『イラストで覚える生産現場の英語』(ジャパンタイムズ)など多数。

Twitter:@HardLifeEasy

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