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東芝、経営不安再び…“固定費削減”頼みの副作用、ビル設備事業依存で新事業創出できず

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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明確なビジネスモデルの重要性

 東芝に求められることは、新しいビジネスモデルを明確に示すことだ。言い換えれば、経営陣はわかりやすい言葉で東芝の成長の源泉を示し、それが各事業の成長につながるというシンプルなロジックをステークホルダーに提示することだ。それは、組織に属する人々に共通する価値観を示すことでもある。価値観が共有されれば、組織はまとまる。

 東芝に、重要なチャンスがあると考えられる分野のひとつに人工知能(AI)がある。インフラやビル設備だけでなく、生産現場、家庭など、社会のあらゆるリアルな場面でAIの活用範囲は広がる。すでに東芝はAIの研究を進めてきた。同社は鉄道車両のメンテナンスの効率化などにAIを用いている。その活用範囲がさらに広がればよい。

 東芝がAIの開発を事業の核に据え、それを用いて各事業の成長を目指すことができれば、今後の事業展開はかなり違ったものとなるだろう。AIの分野では中国を中心に開発競争が激化している。東芝が変化に適応するには、世界のIT先端企業などとアライアンスを結び、研究開発力を引き上げることも欠かせない。東芝が専門家の登用を進めつつオープンな姿勢でイノベーションの発揮を目指していくことが、新しい事業の育成を支え持続的に収益を獲得することにつながるだろう。

 経営陣が明確なビジョンを提示することこそが、組織全体に向かうべき方向を示し、人々の活力を高めることに欠かせない。その環境が実現すれば、市場参加者は東芝の経営再建が進み、持続的に収益が獲得できる体制が整うとの期待を強めるだろう。反対に、経営陣が固定費削減を重視し続けるのであれば、経営再建の先行き不安は高まるものと考える。

 東芝は、どのようにして経営再建を進めるか、重大な局面を迎えている。同社の経営陣が冷静かつ長期の視点で成長のビジョンを描き、それを株主や従業員などに提示して利害を調整し、着実に収益が獲得できる体制を整えることを期待したい。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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