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GAFA匹敵の巨大IT企業がいない「経団連」に主導される日本経済の不幸

文=編集部
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経団連会館(写真:金田啓司/アフロ)

 日本経済団体連合会(経団連)は7月26日、リンパ腫で入院中の中西宏明会長(日立製作所会長)が9月9日の会長・副会長会議から復帰する見通しだと発表した。久保田政一事務総長によると、治療は順調で副作用もほとんどないという。9月から定例会見に出席し、政府の経済財政諮問会議や未来投資会義にも出る予定だ。

 復帰から3カ月ほどは、国内外の出張を控える。例年9月頃に実施する経済界による中国訪問(日中経済協会合同訪中代表団)も参加を見送る。

 経団連は5月27日、中西会長が体調不良のため検査入院すると発表した。「6月末ごろまで会長職を休む。5月初旬から体調不良が続いていたといい、当面は都内の病院に入院して詳しく検査する」というものだった。

 中西氏は2018年5月に経団連会長に就任した。今年5月30日の定時総会で就任2年目に入ったが、総会も欠席した。中西氏が務める予定だった総会の議長は、審議員会議長の古賀信行氏(野村ホールディングス会長)が代理を務めた。経団連は会長職の代行は置かない。

 経団連は6月5日、「中西会長の療養が長引く見通しになった」と発表。中西氏は都内の病院の検査で6月1日にリンパ腫だとわかり、6月3日に化学療法を始めた。担当の医師の説明によると、1~2カ月間は入院して治療に専念し、その後は通院で完治を目指すという。「8月ごろまで治療に専念し、復帰は秋になる見通しだ」とした。

 8月のお盆休みまでの予定はキャンセル。政府の経済財政諮問会議や未来投資会議の議員を務めているが、欠席することになった。7月、フランスで開かれた経済界版の主要7カ国会議(B7)にも中西氏が出席する予定だったが欠席、副会長の小林健三菱商事会長と片野坂真哉ANAホールディングス社長、平野信行三菱UFJフィナンシャル・グループ会長が出席した。

 この時点では、「経団連が7月に開く夏季フォーラムへの出欠だけは未定」としていたが、6月28日に欠席すると発表した。同フォーラムは経団連が毎年軽井沢で開く会合で、歴代で会長が欠席するのは初めてのことだ。

 こうした曲折を経て、経団連は7月26日、中西会長の9月9日復帰を発表した。5月21日の入院以来、3カ月半ぶりに現場に戻ることになる。

 経団連の会長が長期にわたって休むのは初めてだ。経団連は会長不在時のルールを設けていない。会長代行を置かず、案件ごとに担当の副会長らが対応することとなった。

 安倍晋三首相は5月30日、都内で開かれた経団連総会で挨拶し、日米貿易交渉について「幅広い物品を対象に交渉を進めていく。そう簡単な作業ではない」と述べ、日本の国益にかなうよう、粘り強く交渉を続ける姿勢を示した。

 米国と日本の貿易(通商)交渉が水面下で続くなか、経団連会長の長期不在は、経済界としての意見表明に影響が出ることが予想された。

 中西氏自身は4月末から5月初旬にかけて渡米し、米国の議会関係者らと会っている。入院直前の5月20日の記者会見では「今、日本の経済界から米国に直接意見を言うのはとても重要な活動だ」と語っていた。

もはや経団連会長ポストは名誉職?

 経団連の歴史的使命は終わったと、かねて指摘されてきた。日本の産業構造は、製造業からサービス業に転換した。だが、経団連は重厚長大産業の製造業が主力メンバーだ。IT(情報技術)化に、完全に立ち遅れた。

 米国ではGAFA(グーグルアップル、フェイスブック、アマゾン)が、中国ではBAT(バイドゥ、アリハバ、テンセント)が台頭したが、日本にはそれらに匹敵するようなIT企業は誕生しなかった。

 経団連の政治への影響力も低下した。1974年7月の参議院選挙では、自民党から経団連に300億円の献金要請があり、党を率いる田中角栄首相がヘリコプターで全国を飛び回り、湯水のごとくカネをばらまいて「金権選挙の極み」との批判を浴びた。だが、それも今や昔。今年の参院選では、経団連の存在感はまったくといいほど見られなかった。

 2012年の第2次安倍晋三政権誕生後、官邸と経団連の力関係は大きく変わった。安倍氏が自民党総裁に帰り咲いた早々、外交や金融政策に注文をつけた当時の米倉弘昌・経団連会長に安倍氏は激しく反発。第2次政権発足後、経団連会長の「指定席」といわれた経済財政諮問会議の議員のポストを米倉氏には与えなかった。一転して14年、米倉氏の後任として経団連会長に就任した榊原定征氏は官邸との関係の修復に務め、“安倍さんのポチ”と揶揄された。

 そして18年、経団連会長に就いた中西氏は、「物言う経済界」のリーダーとなることが期待されたが、今回、長期の不在となり、経団連は鳴りを潜めたままだ。今年の参院戦をみても、経団連の影響力はほとんどなかったといっていい。

 かつて「財界総理」と呼ばれた経団連会長は、「今や名誉職でしかない」といった辛辣な批評さえある。中西氏が復帰しても、逆に病気治療を専念するために経団連会長を辞任しても、誰も驚かないだろう。それほど経団連そのものの存在が軽いものになった。

年内での退陣も

 経団連、日中経済協会、日本商工会議所は、3団体合同の訪中代表団を毎年、秋に北京へ派遣している。昨年は9月10~12日、200人規模の訪問団となった。3団体のトップは当然行くことになっている。

 久保田事務総長が中西氏について、「入院中も政府の会議などの文書に目を通し、必要に応じて指示を出している」と言っていたが、財界関係者は「それができるなら、夏季セミナーには顔ぐらい出しただろう。表に出てこられないほど病状は深刻なのではないか」と懸念する。

 リンパ種と発表されたが、リンパの治療は抗がん剤が全身に回るため副作用が大きい。9月復帰が公表され、一時期よりは沈静化したが、日立製作所社内では株主総会にも出られなかったということで不安が広がった。中西氏は海外担当なので、新規プロジェクトは停滞したともいわれる。

 経済財政諮問会議に出られないので、経団連の意見を出せない。事務総長が代役では弱い。それでいて、「ここに人を出してくれ」など、政府からは頼まれごとばかり来る。経団連内の会議でも、副会長が意見を出して、それをまとめるのが会長の役目だ。会長がいなければまとまらない。

「榊原氏などの元会長、事務総長または審議員会議長の古賀氏が、『健康の回復に専念されてはどうか』などと進言するしかないのではないのか」といった意見も少数だがある、と伝わってくる。

「このまま経団連の会議に出てこられなければ、遅くとも12月には会長交代の話になるだろう」(経団連の元副会長)との見方が広がり始めたタイミングで、9月復帰が公表された。

 来年は東京五輪のために海外からの賓客が激増する。その接遇応対をしなければならないため、体調を崩していては、それも無理だろうとの見方は、依然として根強い。
(文=編集部)

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