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中国の巨大コーヒーチェーン「ラッキンコーヒー」現地レポ【後編】

中国「ラッキンコーヒー」スタバの顧客を奪い激突…人口14億の中国市場の覇者となれるか

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2019年5月17日、ラッキンコーヒーは米ナスダックに上場を果たした。ピンクのスーツの女性が、同社CEOの銭治亜(Zhiya Qian)氏。(写真:ロイター/アフロ)

スケール偏重、店舗の急拡大に死角はないのか?

 中国のコーヒー市場は2013~2017年の間に2倍になり、その後もプラス18%の成長が見込まれているという。この波に乗ったラッキンコーヒーは約1年半という驚異の短期間で米ナスダック市場に上場し、2年で4500店舗の出店を目指している。まさに、「史上最速で拡大するコーヒーチェーン」といえるだろう。だが、この快進撃は果たして今後も持続可能なのだろうか?

 中国市場で先行するスターバックスは、都市部のミドルクラスを中心に着実なブランディングを進めてきた。欧米や日本と比べるとまだそれほどにはコーヒー文化が広まっていない中国において、味と店舗での体験を武器にファンづくりをしている。その市場に低価格を武器に切り込んできたのがラッキンコーヒーだ。「安かろう、悪かろう」ではなく「味は同等、値段が少し安い」というポジショニングは、これまでコーヒーを飲まなかった層を取り込むだけでなく、スターバックスの既存顧客を奪い価格競争に引きずりこむものであることは間違いない。

 当然、スターバックス側としてもこれを看過できるものではなく、2018年9月から阿里巴巴集団(アリババ)と提携してデリバリーサービスへの参入を始めるなど、対抗策を打ち出している。伝統的に店舗での体験を重視し、顧客にくつろぎの場所「サードプレイス」を提供することを価値としてきたスターバックスにとっては、ひとつの賭けになる動きだ。冷めると劇的に味が落ちるホットコーヒーや、時間の経過とともに急速に劣化するクリームが入ったドリンクが多いスターバックスのメニューは、実はデリバリーとの相性が悪い。それでもなおデリバリーに参入することは、「多少味が落ちても、届けてもらえる便利さを選ぶ」という客をも取り込みにいかなければならない、中国市場における現在のスターバックスの状況を浮き彫りにしているともいえよう。

 一方でラッキンコーヒーは、「他のコーヒーチェーンを排除する契約をスターバックスとテナントビルディングが結んでいるのは不当」として訴訟を起こすなど、スターバックスへの対抗意識を隠さない。

 なお、日本や米国ほどメジャーではないようだが、中国のコンビニエンスストアでもコーヒーは売られている。当然、味や高級感ではスターバックスやラッキンコーヒーに劣るのだが、その分値段も1/3~1/2程度と安い。急速に拡大するコーヒー市場を狙って、コンビニ業界がコーヒー展開を強化すれば、安さに惹かれてラッキンコーヒーを利用していた顧客の多くを奪うことになるだろう。

ラッキンコーヒーの広告(筆者提供)

成長の裏に潜む「金食い虫」

 こうしたなか、現時点では圧倒的な成長を見せるラッキンコーヒーだが、その裏には利益を削る過激な集客キャンペーンがある。「2杯買ったら、1杯無料」「5杯買ったら、5杯無料」といった大盤振る舞いは集客に直結するが、当然のことながら利益は削られる。「5杯買ったら、5杯無料」では実質的に半値で販売しているのと同じだ。これでは、いくらアプリや店舗の合理化を進めたところで利益の拡大は難しいだろう。事実、2019年の時点の累計損失は22億2700万元(約378億円)にものぼるという。

 ラッキンコーヒーが急速な出店を続ける裏には利益を削り、損失を膨らませ続ける状況がある。この状況に対して同社は「3~5年は規模の拡大を最優先する」とし、強気の姿勢をくずしていない。背景にあるのは「成長市場で揺るぎないトップシェアを取れれば、後はいくらでも稼げるだろう」という目論見だ。同じくナスダックに上場した米国の配車サービス大手Uber(ウーバー)なども同じスタンスであることを考えると異常なことではないが、一定の危うさをはらんだ戦略であることは確かだ。

 ラッキンコーヒーを創業した銭CEOがかつて配車サービス大手企業の経営にかかわっていたことを考えれば、同社が伝統的なカフェチェーンのビジネスモデルの範疇にないことは明らかだが、拡大の先に利益を生む確固たる方法は未だ見えない。ラッキンコーヒーは、その名の通りラック(運)の良さに恵まれない限り苦い後味をスタートアップ業界に残しかねない。

(取材・執筆=楯雅平、編集=河鐘基【ROBOTEER,Inc.】)

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