NEW
鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

「高齢者に火災保険は不要」はトンデモナイ!火災で家を失った際の完全マニュアル

文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

 実際の判例でも、「天ぷら油の入った鍋を火にかけたまま、その場を離れて戻ってきた時には出火していた」「寝る前にたばこを吸って、うとうとしてしまい、気が付いた時には布団が燃えていた」「石油ストーブの火が付いたまま給油して、石油が落ちて引火した」などが重過失と判断されている。仮に軽微な過失と判断された場合でも、それを繰り返すと、重過失とみなされるとの考えもある。

 つまり、自分の家から出火して近隣に類焼を及ぼすと、すべてが“無罪放免”となるわけではないことがおわかりかと思う。

行政の各種支援

 先日の京都アニメーション放火事件で消火活動を行った京都市消防局の会見でも、目に涙を浮かべながら「(建物の中に)入ろうとしたができなかった」と話していたのを聞いて、筆者が何度か火災現場の取材をしたときを思い出した。いずれも一般家庭の火事だったが、テレビなどの報道で見るよりも火の勢いと火が回る速度は、すさまじい。中心部は1000℃を超える熱さともいわれ、到底そばに近づけるものではない。このため、歯ブラシ1本、タオル1枚さえ持ち出すこともできず、文字通り“着の身着のまま”で、命からがら助かるケースも多い。

 高齢者の火災保険について説明する前に、行政などの支援について紹介したい。

 自宅や家財が火災に遭い、被害が大きいほど、その日からの生活の場所の確保に困ってしまう。「どうしたらいいか」と絶望する気持ちになるが、全国の行政や官公署・日本赤十字社などは、各種の救済・支援制度等を制定し、被害状況に応じて受けられる場合がある。

 日本赤十字社は、災害時には医療救護や血液製剤の配給以外にも、必要に応じて、災害見舞金や弔慰金、毛布やタオル、歯ブラシなどの日用品、安眠セット、緊急セットなどの緊急物資の交付を行っている。

 手渡しの現場に居合わせたことがあるが、火災で全焼し、何一つ持ち出せなかった被災者の方が、無表情で受け取っていたシーンを忘れることはできない。警察や消防関係者、町会の方もその場に居合わせたが、深い悲しみを察して、誰も掛ける言葉など見つからなかった。

 火災は高齢者がストーブに火がついたまま給油したことが原因だった。2階の窓から隣家の2階の窓にパリーンという乾いた音とともに一瞬にして火柱が突き抜け、飛び火した。真っ暗な夜空に壁に貼っているポスターが浮かび上がる。その様子から恐らく子供部屋であることがわかった。それまで携帯電話で火事の様子を撮影していたヤンチャそうな若者が「あの部屋が俺の部屋だったら、辛すぎる」と独り言をつぶやき、撮影を止めた。火はさらに勢いを増し、わずか30分程度で隣家は全焼した。後日、逃げるだけで精一杯で何も持ち出すことはできなかったと聞いた。

関連記事

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ