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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

「年間4300万箱」販売のカルピス、“100年続く”ブランド戦略

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
「年間4300万箱」販売のカルピス、100年続くブランド戦略の画像1
現在の「カルピス」ブランド(画像提供:アサヒ飲料)

「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数あるジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。

 本州の梅雨明けは7月下旬までずれ込んだが、8月は一転して猛暑が続いた今年の夏。各メーカーが出している清涼飲料の売れゆきも回復したようだ。

 清涼飲料市場は5兆2000億円弱(富士経済調査のデータ数値)といわれる巨大市場だが、茶系、果実系、野菜系、コーヒー系、炭酸系、乳性・乳酸菌系など幅広く、競合も多い。

 そのなかに、7月7日にブランド誕生100年を迎えた「カルピス」もある。ご存じのとおり、昔から親しまれている乳性・乳酸菌飲料のひとつだ。

 近年のカルピスの訴求内容は、商品パッケージでは「乳酸菌と酵母 発酵がもつチカラ」(2018年から)で、広告では「カラダにピース」が知られている。一定以上の年齢の人には「初恋の味」というキャッチコピーがなじみ深いかもしれない。発売するアサヒ飲料によれば「日本人の99.7%以上が『一度は飲んだことがある』商品」(広報担当)だという。

 だが、競合も多いなか、歴史やノスタルジーに浸るだけでは戦えない。現在、カルピスはどんな立ち位置にいるのか。「100年ブランドの生き残り」の視点で考察した。

「出荷数量」は10年で1.5倍に拡大

 現在、「カルピス」ブランドは、「ストレート」(全体の約90%)と「コンク」(同約10%)を合わせて「年間約4300万箱」も販売するメガブランドだ。一般に清涼飲料は「年間2000万箱を超えると飲料ブランドのトップ30に入る」という。つまり、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど、小売店の店頭で目にする存在となり、これ以外に自動販売機(自販機)ルートもある。その倍の4000万箱以上を売り上げるブランドは、消費者にとってかなり身近な存在だ。

 別の数値である「出荷容量」では、「カルピス」は2007年頃からほぼ毎年数字を伸ばし、17年には年間60万キロリットルを超えた。「この10年で約1.5倍に増えた」という。

 この出荷容量は、同ブランド独特だ。薄めて飲む「原液」(コンク=濃縮の意味)と、そのまま飲む「ストレート」の商品があり、コンクを標準的な割合で薄めた量を想定し、合算して「出荷容量」として発表する。かつては「薄めて飲む飲料」中心だったが、1991年に発売した「カルピスウォーター」の大ヒットにより、消費者の飲み方が変わった。現在は前述のように約9割をストレート飲料が占めている。

「乳酸菌」と「酵母」の2つを訴求するワケ

 昨年から訴求する「乳酸菌と酵母 発酵がもつチカラ」は 、かなり“説明調”なコピーだ。だが、あらためて訴求する必要があったという。

「『カルピス』の原料は国産の生乳で、この生乳を脱脂し、『乳酸菌』と『酵母』の2回の発酵を行い、味を仕上げた結果、生まれる乳酸菌飲料です。乳酸菌と酵母、発酵という自然製法が生み出す安心・安全で健康的な飲料ですが、私たちの説明不足もあり、まだまだ正しく認知されていません。そこで2009年から『牛乳』『乳酸菌』で安心・安全を打ち出し、15年からは『発酵』の魅力により健康価値を伝える取り組みをしています」(広報担当)

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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