ドミノピザ、宅配10分以内に…ウーバーイーツ爆発的普及の衝撃、マックもスタバも導入

ドミノ・ピザの店舗(「Wikipedia」より)

 宅配ピザ各社が生き残りに躍起だ。ドミノ・ピザが、注文を受けてから顧客に提供するまでの時間を、テイクアウトで3分以内、宅配で10分以内とする取り組み「PROJECT 3TEN」を発表したことが、それをよく表している。平均21分となっている配達時間のさらなる短縮を目指し、顧客からの支持を獲得したい考えだ。

 スピード配達を実現するため、今後は積極的に店舗展開していくという。7月2日に国内600店舗目となる「ドミノ・ピザ銀座店」(東京・中央)をオープンしたが、2028年までに1000店に増やす考えだ。店舗数を増やすことで小商圏化し、できるだけ多くの顧客の近くに存在するようにして、スピード配達を実現する。

 ドミノ・ピザがここまでスピード配達にこだわるのは、10月の消費増税に伴う軽減税率の導入によって、食品のテイクアウトや宅配は税率が8%に据え置かれ、宅配の需要が高まるとみられるためだ。スピード配達を訴求し、高まる宅配需要の取り込みを狙う。

 軽減税率は、宅配のほかテイクアウトも対象となるが、これをチャンスと捉え、外食チェーン各社はテイクアウトの強化を図っている。

 スターバックスコーヒーは、スマートフォン向けアプリで事前に注文と決済ができるサービスを、6月から東京都内の一部店舗で始めた。商品ができあがるとお客のスマホに通知が届くので、客はそれから店に行けばレジに並ぶことなく商品を持ち帰ることができる。スタバは、これによりテイクアウト需要を掘り起こしたい考えだ。

 外食チェーンでは、これと似たような仕組みを導入したり強化したりするところが増えている。モスバーガーやケンタッキーフライドチキンは、すでに事前注文ができるスマホ向けアプリを導入しており、機能を強化するなどして利便性の向上を図っている。マクドナルドは、一部の店舗で事前注文の実験を行っている。いずれ全店に導入するとみられる。こういった動きが今後、さらに広がっていきそうだ。

他業態の外食企業との競争も激化

 宅配の強化に動く外食チェーンも多い。ガストやジョナサンなどを展開するすかいらーくホールディングス(HD)は、国内約3200店のうち約1000店で自前の宅配サービスを手がけているが、対応店舗を増やしている。同社の宅配事業は毎年2桁成長を続けており、18年の売上高は前年比15%増の215億円と大きく伸張している。

 ウーバーイーツや出前館といった料理宅配サービスを活用する企業も増えている。すかいらーくHDは、ウーバーイーツを活用して宅配する店舗を増やしており、18年11月時点の導入店舗は61店にすぎなかったが、19年5月には444店にまで拡大した。

 ウーバーイーツは、スタバやマクドナルドなど大手外食チェーンが続々と導入している。ウーバーイーツは16年9月に日本に上陸しサービスを始めたが、わずか3年ほどで東京や大阪をはじめ全国 10都市で1万軒以上の飲食店が登録するまでに成長した。

 出前館も活況を呈している。5月末時点でアクティブユーザー数(直近1年間で1回以上注文した利用者数)は、1年前から11%増えて約290万人となった。加盟店舗数は同18%増の約1万9500店、年間オーダー数は23%増の約2090万件となっている。いずれも大きく伸びていることがわかる。加盟店には、モスバーガーやCoCo壱番屋といった大手外食チェーンが名を連ねている。

 このように、外食チェーン各社はこぞってテイクアウトと宅配を強化している。そのため、宅配ピザ各社は今後、厳しい競争が待ち受けているといえる。特にピザハットを運営する日本ピザハット・コーポレーションの業績は厳しく、今後が危ぶまれている。同社の決算公告によると、19年3月期の純利益は500万円とかろうじて黒字だったが、18年3月期は3億9900万円の赤字だった。17年3月期は4000万円の黒字だったが、16年3月期は3億5100万円の赤字となっている。ここ数年だけ見ても、厳しい状況にあることがわかる。

 ドミノ・ピザの運営会社、ドミノ・ピザジャパンの業績も厳しい状況だ。19年6月期は業績がまだ公表されておらず、18年6月期は損益計算書が非公表のため、それぞれの業績は不明だが、17年6月期は売上高が前期比2%増の340億円と増収だったものの、営業利益が8%減の12億円と減益だった。好調とはいえない状況にある。

 近年は、売上高こそ増加傾向にあるものの売上高営業利益率は低下傾向にあり、厳しい状況が続いている。同社は宅配の利便性や効率性を高めることで顧客からの支持を獲得し、急成長を果たしてきたが、ここ数年は収益性の低下で苦しんでいる。

新しい施策を続々と導入するドミノ・ピザ

 ドミノ・ピザは、特にインターネットを活用することに力を入れてきた。まず、電話でピザの注文を受けることが一般的だった04年に、自社開発のECサイトで注文を受け付けることを始めた。それにより利便性の向上を図った。この施策は成功し、ネットでピザを注文するスタイルを確立させた。04年度のネット注文の割合は5%程度に過ぎなかったが、12年度には約50%に達している。

 10年にはスマホアプリ「Domino’s App」を導入した。スマホで簡単に注文ができるようになったほか、GPS(全地球測位システム)を使って利用者がいる場所までピンポイントでピザを配達できるようになった。これにより、公園での花見客などの開拓に成功している。

 GPSはほかの場面でも活用されている。宅配用のバイクにGPS端末を付けることで、配達状況が把握できるようになった。利用客はスマホ上で配達員の位置を確認できるので、安心して待つことができる。また、店側は効率的な配達スケジュールを組むことができるようになった。

 ドミノ・ピザは、こういったネットを活用した施策を業界に先駆けて打ち出してきた。それにより「先端的なブランド」とのイメージが定着し、顧客の獲得につながった。

 スピード配達も、ドミノ・ピザならではだろう。昨年1月から、注文から20分以内という早さでピザを届けることを約束する有料のサービスを始めた。場合によっては15分以内で配達する。これほどのスピード配達を約束するところは、ほかにはないだろう。

 ドミノ・ピザはスピード配達を実現するため、ピザを焼くオーブンを刷新した。従来のオーブンだとピザが焼き上がるのに5分かかるが、新たに開発したオーブンだとわずか3分で焼き上がるという。この新しいオーブンの導入を進めている。

 電動自転車の導入も進めた。バイクは道路状況によって移動が制限されがちだが、電動自転車であれば、道路状況が悪くてもスムーズに移動できる。また、バイクを運転できない人でも配達が可能となるため、より多くの配達要員を確保できるようになった。

 ドミノ・ピザは、こうしてスピード配達を実現して「熱々のピザ」を提供し、ピザハットなど同業との競合に対抗してきた。ただ、それでも十分ではなく、業績は厳しい状況が続いている。それは、大手外食チェーンが宅配市場にこぞって参入し、競争が激化しているためだ。

 そうしたなか、ドミノ・ピザはスピード配達実現に向けて「PROJECT 3TEN」を打ち出した。「10分以内」という、無謀とも思える早さでの配達を実現しようとしている。そこまでしなければ生き残れない時代に突入したともいえるのかもしれない。

 10月の消費増税をきっかけに、新たな戦いの火蓋が切られた。これまでは宅配ピザ業界内での戦いだけを意識していればよかったのかもしれないが、今後はスタバやマクドナルドなど多くの外食チェーンとの戦いも意識しなければならなくなった。果たして、ドミノ・ピザやピザハットなど宅配ピザ各社は生き残ることができるのか。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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