NEW
木村貴「経済で読み解く日本史」

政府が独占する“通貨発行益”という特権…各国政府が仮想通貨リブラを批判する背景

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 改鋳のたびに、新銭1枚をもって旧銭10枚にあてるという無理なレートで発行した。しだいに鉛の含有量が増え、品質が劣化し、通貨の価値が下落する。裏を返せば、物価が上昇した。711年から751年までに米価は15倍になった。さらに751年から764年までに6倍になった。大幅なインフレである。

 古代日本の人々は、慣れ親しんだ銀銭や金貨代わりの米、布などの使用を禁じられ、朝廷から質の悪い通貨を押し付けられたあげく、所有するお金の価値低下や物価高に苦しんだわけだ。

リブラ普及への危機感

 今の日本ではアベノミクスによる異例の金融緩和を背景に、人件費や物流費が上昇し、日用品の値上がりがじわじわ広がっている。物価が大幅に上昇しない一因は、銀銭や銅銭を用いた古代と違い、今は政府が発行する円以外に通貨の選択肢が事実上存在せず、人々が円を使わざるをえないためだ。もしフェイスブックの「リブラ」などのデジタル通貨が普及し、人々が円から乗り換えれば、円の価値が一気に下がる(円でみた物価が上昇する)可能性もある。

 政府は権威が揺らぐだけでなく、通貨発行益という特権を失いかねない。各国の通貨当局がリブラを激しく批判する背景には、そうした事態を恐れる危機感がある。

 庶民に不便や物価高という犠牲を強いても通貨発行の利益を独占したがる権力者の本性は、1300年前の昔から変わっていない。

(文=木村貴/経済ジャーナリスト)

<参考文献>

飯田泰之『日本史に学ぶマネーの論理』PHP研究所

今村啓爾『日本古代貨幣の創出』講談社学術文庫

高木久史『通貨の日本史』中公新書

●木村貴(きむら・たかし)

1964年熊本県生まれ。新聞社勤務のかたわら、欧米の自由主義的な経済学や政治思想を独学。経済、政治、歴史などをテーマに個人で著作活動を行う。

twitter: @libertypressjp

ブログ「自由主義通信」

政府が独占する“通貨発行益”という特権…各国政府が仮想通貨リブラを批判する背景のページです。ビジネスジャーナルは、連載、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!

関連記事

BJ おすすめ記事