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【悪化する日韓関係】嫌韓を煽るメディアよ、頭を冷やせ…江川紹子の提言

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日韓における歴史の否定や単純化

 そして2015年夏、安倍首相が戦後70年談話でついにこう宣言した。

「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」

 これに、加害の事実を否定した人たちが呼応する。かつての朝鮮人に対する対応について、日本側にまったく非がないかのように主張する声も大きくなっていく。慰安婦となった女性を貶めるような物言いも飛び交う。自分たちにとって都合のいい事実のみを寄せ集め、新たな歴史ストーリーをつくり上げたり、関東大震災の際の朝鮮人虐殺などの史実をまるごと否定する歴史修正も横行している。

 さまざまな出来事が絡み合ってできている歴史を、単純化し、自分たちの都合のいい部分だけをつなぎ合わせて語る人たちがもてはやされるようになった。

 ただし、歴史を単純化し、都合のいい部分だけを語る、という点は、韓国側にも言えるのではないか。

 戦前の朝鮮の人たちは、日本に支配される屈辱を苦痛に思う一方で、儒教文化に根ざした男尊女卑的価値観や経済的な困難による苦労も味わっていたのではないか。一口に日本人といっても、いろいろな人がいることを、実体験として知っていた人もいただろう。

 しかし、生の体験をしていない人には、「強制連行されて慰安婦にさせられた」「強制連行されて劣悪な環境でただ働きさせられた」などという、強烈で単純化された被害体験のみが伝えられ、そうしたシンプルな構図からはみ出すエピソードや、背景となった社会的時代的状況など置き去りにされてはいないだろうか。

 こうして、どちらの国でも、後世に伝えられる歴史は、実態とは離れ、単純化されていっているのではないか。一時期、日韓双方で歴史学者が史実に基づいて歴史認識のすりあわせをしようと試みたこともあったが、とりわけ韓国側が自国の歴史認識にこだわったこともあり、うまくいかなかった。

 しかし、だからといって、日本が加害の事実まですべて「なかったこと」にするのはどうか。それは、日韓関係を修復するのに壁となるだけでなく、国際社会における日本の評価を著しく貶めると思う。

 日本の加害の事実はきちんと伝えつつ、そんななかでも人々の人権を擁護し、その人生を助けた日本人の姿を伝えるということは、矛盾なくできるはずだ。そうした教育は、過去の過ちを学ぶと同時に、日本人として誇りを感じさせ、国や所属する組織が誤った時に人間としてどう振る舞うべきかを学ぶ機会にもなる。犠牲者の無念を忘れずにいると共に、日本が過去の歴史に向き合う姿を、国際社会に知ってもらうことにもなろう。そしてなにより、歴史の実相に近づくことができ、物事は「善vs悪」といった単純なものばかりではない知らせ、物事を単純化する風潮にもブレーキをかけるのではないか。

 もっとも、それで韓国側が納得するかというと、そう簡単にはいかないだろう。

 作家の村上春樹さんが、「相手国が『すっきりしたわけじゃないけれど、それだけ謝ってくれたから、わかりました、もういいでしょう』と言うまで謝るしかないんじゃないかな」と述べているが、果たしてどうか。 

ドイツにもギリシャから戦争賠償請求が

 最近、ナチス・ドイツの侵攻を受けたポーランドや占領を経験したギリシャの現政権において、ドイツへの賠償を求める動きが相次いで報じられた。

 第1次世界大戦の後、敗戦国のドイツには戦勝国からの巨額の賠償請求がのしかかり、それがナチスの台頭の一因となった教訓から、第2次世界大戦後、戦勝国はドイツや日本に対して、賠償を放棄するなど寛大な対応をした。

 1953年にソ連がドイツへの賠償請求権を放棄し、ポーランドも同意。さらに1970年のワルシャワ条約でも、ポーランドのドイツへの賠償請求放棄が確認されている。しかし、ポーランドの現政権は、「賠償放棄は冷戦時代のソ連に強要されたもので無効」と主張している。

 ドイツは、ギリシャに対しては1960年に1億1500万マルクを支払ったことで賠償義務を果たしているとしているが、ギリシャの現政権は求める賠償金の額が3000億ユーロ(約35兆円)以上になると見込んでいる。

 冷戦の影響や、巨額の財政赤字が発覚した「ギリシャ危機」で債権国のドイツが厳しい緊縮財政を求めたことなど、さまざまな要素が絡んでいるが、ナチス政権への反省を表明し続けている“優等生”のドイツでさえ、今なお賠償問題から逃れられずにいる現実は重い。

 まして韓国の軟化は容易ではないだろう。しかし、日本が意識しなければならないのは、韓国だけではない。日本は、その丁寧な対応を、第三国から見て理解してもらえるようふるまうことも必要だと思う。

 そのためにも、韓国や韓国の人たちに対しては敬意をもちつつ、法的な主張や対応を誠実にしていく。加害の事実については、後世にきちんと伝える。差別など人権侵害に抗った人たちについても、しっかり教えていく。

 こうした地道な対応を、誠実に淡々と続けていくしかないのではないか。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

●江川紹子(えがわ・しょうこ)

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か – 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。

江川紹子ジャーナル www.egawashoko.com、twitter:amneris84、Facebook:shokoeg

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