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ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~ポスト五輪を待ち受ける23区の勝ち目、弱り目

「東京五輪のために羽田空港ゲートウェイ化」のまやかし…時代に取り残される大田区

文=池田利道/東京23区研究所所長
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 事態の改善に期待が持たれているのが、天空橋駅前の旧ターミナルなどの跡地再開発。2020年6月の開業を目標に工事が進んでいる第2ゾーンでは約1700室のホテルが整備される予定で、大田区内のホテル客室数は一気に倍増することになる。だが、量が足りれば、それで羽田空港と大田区の共生という課題は解決するのだろうか。

 2016年に大田区が国家戦略特区の活用による我が国初の民泊制度を導入した背景に、ホテル不足への対応があったことは間違いない。しかし、そこには、食事や買物や大田区名物の「黒湯温泉銭湯」の利用などを通じて外国人観光客とまちとの体験型交流関係を深めていくという、より重要な狙いがあった。ホテルニーズが空港内で自己完結してしまうと、便利かもしれないが、それ以上の広がりは期待できない。

天空橋再開発に見る、国と区の思惑の違い

 天空橋地区第2ゾーンの再開発は、今政府が国家戦略として推進しようとしている「MICE(Meeting、Incentive-Travel、Convention、Exhibition)」を強く意識している。

 新しいものが大好きな一方で忘れるのも早い日本人は、これまでもはやりの開発キーワードを目まぐるしく変遷させてきた。今はMICEが流行の最先端にあり、築地市場跡地利用のキーコンセプトもMICEだ。その意味では、これも「金太郎飴」の一種で、大田区では深夜・早朝便利用者の仮眠需要が多いという実態は発想の外に追いやられている。しかし、それでは羽田空港と大田区の共生関係はいつまでたっても実現しない。

 たとえば、お台場の「大江戸温泉物語」では、早朝に羽田空港まで無料バスで送ってくれる仮眠利用が人気を呼んでいる。大田区平和島のスーパー銭湯でも同じようなサービスがある。天空橋の再開発でも温浴施設が併設されるようだが、規模としてはそれほど大きなものではないし、開発コンセプトと照らして仮眠には違和感がある。おそらく、仮眠需要など重視されていないのだろう。

 一方、2020年に先行開業、2022年グランドオープン予定の第1ゾーンは、産業創出拠点とクールジャパン発信拠点の形成を目指すという、ものづくりのまち大田区ならではの色彩が濃い。第1ゾーンは区が、第2ゾーンは国が中心となって事業を進めている。両者の思惑の違いが図らずも現れたといえようか。

 ものづくりの交流拠点を整備したからといって、地盤沈下が進む大田区の町工場が一気に息を吹き返すとは思えない。しかしそれでも、我がまちの存立基盤の上に立って未来を考えることは基本中の基本だ。安易にはやりに乗ろうとすることとの差は、自ずとついてくると考えざるを得ない。

(文=池田利道/東京23区研究所所長)

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