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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

親の火災保険を今こそ見直しなさい!古い内容のままで火災、子供が破産の例も

文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

 話しを戻す。今の火災保険は、再調達価格(損害に遭った建物や家財を、被害前と同等に新たに建築・購入するのに必要な金額)が主流だが、一昔前は時価額が主流だった。今は再調達価格のみを発売する損保会社もあれば、どちらかを選択できる損保会社もある。時価額は経過年数や消耗度合いによって建物や家財の価値は下がるため、下がった価値を基準に保険金が支払われる。再調達価格か時価額かは契約時に設定する。

 高齢者の中には、時価額の火災保険を希望する方が未だにいらっしゃる。再調達価格の保険を薦められても、「火事は起こさない」と主張されるためだ。あるいは補償云々より、再調達価格の補償の方が当然、保険料が安くなるため、保険料の観点から時価額を希望される方もいる。あなたの親の火災保険の補償はどうなっているだろうか。

 自宅が全焼すると、いくら行政などの支援制度があるにせよ、支援金だけでは到底、家を新築できる金額ではない。自宅はあくまでも私的財産のため、その購入を国や行政が全面的にバックアップできないからだ。自宅の再建は、火元であれ、類焼であれ、自分の火災保険で賄うこととなる。

 時価額の火災保険に加入し、火災になった場合、新築する不足額を自分で調達しなければならない。実際、親の自宅の火災保険の設定が時価額で全焼した場合、子供たちが再建のための不足分を出したり、子供がそれまで住んでいた家を手放し、2世帯住居としてローンを組んだ例もある。

 ちなみに高齢者の住宅再建に際して注意すべきは、介護費用のことだ。年金で生活をしている高齢者は住宅ローンを組むのが現実的に厳しいため、預貯金を取り崩して新築費用に費やしてしまう方もいる。その結果、介護費用が不足して、子供に負担を強いる可能性がある。介護費用は地域や入居施設によって違うが、首都圏で平均的な優良介護施設に入居すると年間約360万円から450万円かかるケースも珍しくない。筆者が首都圏の有料介護施設入居者300人にアンケート調査を行ったら、入居期間は平均約7年間という結果が出た。中には103歳まで10年以上も施設で暮らした方もいる。

「その時に考えればどうにかなる」と言う高齢者は少なからずいるが、場当たり的に対処して介護費用が賄えなくなり、保証人である子供が破産している現実がある。こうなれば、「その時に」というのでは取り返しがつかない。

 今は再調達価格が主流とはいえ、時価額の契約もあるため、「大丈夫、きちんと入っている」という親の言葉を鵜呑みにせず、火災が起こった時の子供への経済的なしわ寄せを親に理解してもらい、再調達価格の補償かどうかを確認していただきたいと願う。大変な状況に直面すると、人は目の前のことにとらわれてしまうが、住宅再建には長期的なマネープランを立てることが大切だ。

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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