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柔道、日本で初の「男女混合団体戦」は無理があった?男女平等で人数偶数の難点

写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト
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戦い終えた12人の日仏両国選手

 大学はさまざまだ。各大学5人とか7人の大会が多いが、戦前の高等専門学校の柔道を引き継ぐ国立七大学(東大など旧帝国大学)の大会は15人による勝ち抜き戦。今年7月の大会は東北大学と大阪大学が代表決定戦を7回も繰り返したが決着がつかず、両校優勝となった。だが、テレビを念頭に置いた大会でそんな悠長なことはできない。男女混合の場合、勝ち抜きにすれば、力が違い過ぎる男女が対戦してしまう可能性があるため、勝ち抜きはあり得ない。 

すべてが抽選

 今回の世界選手権、団体戦、見ていて驚いたのはフランスvs.キューバ戦だった。3-3となった。抽選で女子57キロ以下級が選ばれた。さあ、注目の「代表決定戦」が始まるのかと思ったら、審判が両チームを並ばせて、フランスに手を上げた。キューバの選手が前の試合で反則して失格、出場停止していたためという。「そんなアホな」とずっこけてしまった。

 それならもう一度くじを引いて別の階級を選べばいいと思ったが、テレビ中継の時間制約がありこうなっていたという。今大会、フジテレビが8日間すべて、ゴールデンタイムに中継したのだが、興ざめだった。これだけは、なんとかしてほしい。

 決勝を見てもわかるように、出てくる順番も軽いクラスから始まるわけでもなく、試合ごとにバラバラだ。「すべてが抽選なんです。登場する階級の順も試合ごとに抽選なんですね。軽いクラスの強い国が有利になるとかをなくすためです。男女平等、階級平等と大変そうですよ」とベテランのスポーツ紙記者。

 人数にもよるが通常、国内の剣道や柔道の団体戦は、先鋒、次鋒、五将、中堅、三将、副将、大将とされるが、偶数なら中堅は存在しないし、国際大会でこういう呼称もない。ここでも日本の伝統文化は消えている。

 バルセロナ五輪(1992年)の女子52キロ以下級で銀メダルに輝き、フランス代表チームのコーチも務めた溝口紀子氏(日本女子体育大学教授)は「男女混合の団体戦という発想は日本ではなく欧州の発想なんです。向こうでは結構そういう試合もやっています。発展途上ですが、日本はまだ思考が追いついていない。今回、(村尾と対戦した)クレルジェ選手の押さえ込みを宣告しなかったり、(新井と対戦した)一本と思われたガイー選手の投げ技をポイントに取らなかったり……。今回は安倍首相が来られたためかはわかりませんが、審判も日本贔屓に見えました。五輪はそうはいきません」と言う。 

 東京五輪では今回のように団体戦向けの選手が別に選ばれるわけではなく、個人戦に出場した代表からチームが組まれる。フランスは今大会、参加しなかった男子最重量で無敵の王者リネールが出てくる。溝口氏はこう指摘する。

「フランスは日本よりもチームとしてのまとまりがある。今回は日本が勝ちましたが、オリンピックではフランスはもっと力を入れてくる。団体戦には、個人戦と違いさまざまな戦略が考えられます。極端に言えば、最後はくじに持って行って勝とうぜ、とかちょっと日本人とは発想が違う。総合力ではまだ日本が上とは思いますが、よく研究しないと思わぬ戦略でやられる可能性もあります」

 注目の五輪新種目、男女混合の団体戦は「日本のためにできた新種目」などとはまったく違うようだ。

(写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト)  

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