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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

韓国、「WTOで日本に勝訴」と虚偽の発表…無関係な国際会議でも日本を批判し“問題児”扱い

文=渡邉哲也/経済評論家
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韓国の文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 日本製の空気圧伝送用バルブに高い関税を課している問題について、韓国が世界貿易機関(WTO)の協定に違反していることが確定した。それにもかかわらず、韓国は「韓国の勝訴が維持された」などと不可解な主張をしている。

 半導体や自動車部品などの工場生産ラインで使用される日本製の空気圧伝送用バルブが不当に安く輸出されているとして、韓国政府は2015年8月に11.66~22.77%の追加関税を適用した。日本政府は韓国の措置がWTO協定違反にあたるとして、16年3月からWTOへの提訴手続きを行っていた。

 1審にあたる紛争処理小委員会は18年4月に、日本製バルブは韓国製より性能が高いために競合しないことなどを理由に、韓国に措置の是正を勧告した。つまり、日本が勝訴したわけだが、韓国側は不服として上訴した。そして、2審にあたる上級委員会でも、韓国の措置はWTO協定違反になるとして、是正を求める最終判断が下されたのだ。

 しかし、韓国の産業通商資源省は「大部分の実質的な争点で韓国側の措置がWTO協定に違反すると立証されず、韓国の勝訴が維持された」などと主張しており、国際社会の認識と大きく食い違っている。一方、世耕弘成経済産業大臣(当時)は「韓国にWTO協定に整合しない措置の誠実かつ速やかな是正を求めていく」と述べている。最終審となる2審でも日本の主張が認められたことで、今後は韓国側が勧告を履行しない場合は、WTO協定に従って日本が対抗措置を発動することもできる。

韓国のWTO提訴が無意味な理由

 一方で、韓国は日本による半導体材料の輸出管理強化についてWTOに提訴したが、これは無意味と言わざるを得ない。韓国は日本の措置について、元徴用工訴訟の問題に関連した「政治的動機」「差別的措置」などと訴えているが、日本側は一貫して「安全保障上の問題」「輸出管理の不適切な事案」を理由としている。そして、実際に15年から19年3月までに戦略物資の違法輸出が156件に上ったことが韓国側から発表されている。その行き先は、イランやロシア、アラブ首長国連邦などだ。

 そもそも、WTOは安全保障の問題は協議の対象外であるため、日本が安全保障を理由にしている限り、韓国の提訴は的外れなものとなる。また、韓国はWTOや東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの国際会議の場で日本批判を展開するなど“場外乱闘”ともいえる動きを見せたが、それらはほとんど国際世論の支持を得られず、空振りに終わった。

 たとえば、7月に行われたWTOの一般理事会で日本の措置を批判したほか、その後のRCEPの事務レベル会合でも規制強化の撤回を求めている。日本側は「適切な場ではない」と指摘し、「国内の輸出管理体制見直しの一環だ」と改めて反論したほか、議長国のインドネシアからも「RCEPの議論に集中すべきだ」と注意が与えられた。

 また、WTOは12月で機能不全に陥ることが濃厚だ。紛争処理に対応する上級委員は定員7人で、そのうち3人が選ばれて審理を行うことになっている。しかし、アメリカが16年から新委員の任命を拒んでいるため、現在は委員が3人しかいない状況だ。そして、そのうち2人は12月に任期を迎えるため、WTOは事実上の休眠状態に入る可能性も取り沙汰されている。そのため、韓国がWTOに提訴したところで宙に浮くことは避けられず、もはや意味がないのである。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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