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アサヒビール、新宿・思い出横丁で行った焼酎の新商品発表に脱帽…高いPR効果を実現

文=高井 尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
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焼酎市場は若年層を取り込めるか

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「かのか散歩」の説明資料

 引いた視点で見ると、焼酎市場全体では規模の縮小が続く。酒類全体を見てみると、国税庁の発表資料では、17年度の国内酒類消費量は約837万3600キロリットル(前年比0.5%減)と微減市場のなか、ウイスキー(同10.5%増)、リキュール(同6.1%増)、スピリッツ(同14.5%増)などが伸長した。その一方、焼酎は約81万6000キロリットルと市場全体の1割弱を占めるが、ピークだった07年度から2割近く縮小している(参考:帝国データバンク。19年8月21日の発表資料)。

 その理由として、愛飲家の高齢化、若年層のアルコール離れも指摘される。だが、同行した20代の編集者も「普段は自宅に焼酎を常備しており、飲食店でも飲む」と言い、「今回は多様な楽しみ方を知りました」とも話す。前述した、隣り合わせた20代女性3人も楽しそうに飲食をしていたので、若者にも訴求の工夫次第に思えた。

ハイボールの成功は、脱・前例と新提案

 酒類の世界では10年ほど前に成功事例がある。サントリーが08年に仕掛けた「ハイボール」だ。ジリ貧だったウイスキー業界を復活させ、現在も好調が続くのは、前述のデータにも表れている。

 V字回復の要因を探るため、筆者は成功間もない10年に、当時のサントリー酒類社長や酒類業界に精通するジャーナリストを取材した。

 詳しく紹介する紙幅はないが、「それまで美味しいと考えていたウイスキーの黄金比率12%以上を消費者は『濃い』と感じていたので、ハイボールは8%にした」「従来のウイスキー水割りではやらなかった、レモンを軽く絞ることも好評だった」という話が印象的だった。

 また、「健康問題に敏感な先進国では、アルコール度数の高い酒は流行らないが、割って薄めれば度数も下がり、飲みやすさとともに健康を気にする中高年の嗜好にも合う」という話も聞いた。

 近年では「ハイカラ」と呼ばれる、ハイボールと唐揚げの組み合わせも若い世代を中心に人気だ。炭酸の爽快感×揚げ物を楽しむ人も多い。

「焼酎=オジサンの酒」のイメージを変えられるか

 思い出横丁でも飲食の組み合わせを訴求していたが、こうした一連のハイボールの成功例に、焼酎市場の活路があるのではないだろうか。

 少子高齢化で元気なシニアが多いとはいえ、若者が参入しない消費財(食品も含む)は、やがて行き詰まる。「芋かのか」のパッケージは、失礼ながら若い世代を取り込める感はない。そこは織り込み済みなのかもしれない。

 支持率が高い中高年が健在のうちに、世代交代を図る。口で言うほど簡単ではないが、思い出横丁のような昭和レトロな空間も若者に支持される時代だ。「古い=ダサい」ではなく、どのように「レトロ=かわいい」に変えていくか。

 新たな訴求などに動き続けなければ、消費者と商品との出合いもなく、新展開も見えてこない。焼酎市場のさらなる提案とその成果に期待したい。
(文=高井 尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

●高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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