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「盲腸」をナメると危険…胃腸炎と誤診で悪化→緊急手術も、「不要だから切除」は今や非常識

文=真島加代/清談社
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 虫垂炎が悪化すると、緊急手術が必要な“腹膜炎”という疾患につながる恐れがあるのだ。とても身近な病だが、軽視してはならないのが虫垂炎である。

「虫垂炎には、進行具合に合わせた治療が施されます。近年は、炎症を抑える抗生物質を処方して経過を観察する薬物療法が一般的です。症状が悪化している場合は命にかかわるので開腹手術や腹腔鏡手術で虫垂を切除しますが、基本的には前者のように“切らない治療”が増えてきていますね」(同)

 原因が特定できないため予防するのは難しいものの、食物繊維を多く摂取している人は虫垂炎になりにくいという報告もあるそうだ。

「野菜や果物を積極的に食べて、食物繊維を多く摂るように心がけましょう」(同)

虫垂を切除すると大腸がんのリスク増も

 読者のなかには、盲腸・虫垂に対して「不要な臓器なので切除してもOK」というイメージを抱いている人も多いかもしれない。しかし、医療の世界ではその常識はすっかり覆されている、と江田氏は話す。

「かつて、虫垂は進化の過程で機能が失われた器官(瘢痕器官)だと考えられていました。そのため、虫垂炎になったら症状の重さに関係なく切除したり、別の疾患で開腹手術をした際に“ついで”に健康な虫垂も切除したり、といったことが長い間行われていたんです」(同)

 しかし、研究が進むにつれて、虫垂には「免疫にかかわる重要な役割」があることが判明したという。虫垂は腸内に悪玉菌が増えた際、善玉菌が避難する場所・セーフホームとしての働きがあることがわかったのだ。

「また、虫垂を切除すると大腸がんのリスクが上がるといわれています。虫垂を切除した後は腸内細菌のバランスが崩れてしまい、免疫に悪影響を与えてしまうようです。特に高齢男性の場合、そうでない人に比べて切除後1年半~3年半は大腸がんの発症リスクが2.1倍になるといわれています。3年半ほどたつと大腸がんリスクに差がなくなるので、なんらかのメカニズムで腸内細菌のバランスが元に戻るのかもしれません」(同)

 時がたてばリスクは下がるとはいえ「虫垂が残っている人は残しておくに越したことはない」と江田氏。実は、手塚治虫の名作『ブラック・ジャック』にも虫垂炎を扱ったエピソードがあり、かのブラック・ジャック先生も健康な虫垂を切除することに反対だったとか。

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