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黒い赤ちゃんも…最悪の食品公害「カネミ油症」50年、カネカは被害者救済を一切拒否

文=明石昇二郎/ルポライター
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 1990年代になり、ようやくPCBの無害化処理技術が開発されたが、それまでのおよそ20年の間に行方不明になるPCB入り製品が続出。厳重保管すべく土中に埋められたPCB入り製品の存在が、保管していた会社が倒産するなどして忘れられてしまうケースもあるようだ。そうしたPCBが、地震や津波、水害や土砂崩れ等の災害を機に環境に漏れ出し、新たな被害を引き起こすことも懸念される。

 しかも、PCBが引き起こしたのは環境汚染だけではない。1960年代後半に起きた一大食品公害事件「カネミ油症」がある。

 カネミ油症は、カネミ倉庫(本社・福岡県北九州市)が製造した食用米ぬか油「カネミライスオイル」を食べた人たちの間で発生。原因は、米ぬか油の製造過程で誤って油にPCBやダイオキシン類が混入したことだった。混入したPCBは、カネカの高砂工業所で製造されたものだった。カネミ油症被害者の鈴木文史朗さん(57)は言う。

「だから私たち油症患者の体内にあるのも、カネカ製のPCBなんです」

 一度体内に取り込むとなかなか排出されないPCBやダイオキシンは、油症被害者の血液や脂肪から50年後の今も検出される。市販されていた毒入りの油を買い、食べたことによるカネミ油症の食中毒症状は、過酷を極めた。全身にできる大きな吹き出物「塩素痤瘡」(えんそざそう)などの皮膚障害をはじめ、頭痛や手足のしびれ、疲労感といった神経症状、発がん、性器の奇形などの生殖障害、そして全身の肌に黒い色素沈着を起こしたいわゆる「黒い赤ちゃん」の誕生などである。これ以外にも、原因不明とされ、有効な治療法もない難病に苦しむ被害者も少なくない。

 こうした健康面の異常は、PCB入りの油を食べた者だけでなく、子や孫の世代にまで及んでいる。食べていないのに、親とまったく同じ症状で苦しんでいるのだ。毒の影響が生殖や遺伝子にまで及んでいることが疑われるが、同事件の発覚から50年以上が過ぎた今もなお、健康被害の全体像は把握できていない。医学の怠慢と言うほかない(参照:明石昇二郎『黒い赤ちゃん カネミ油症34年の空白』)。

 驚くべきことに、原因物質であるPCBを製造していたカネカは、油症被害者の救済には一切関与していない。さらには、PCB特措法に基づくPCB廃棄物の無害化処理事業にも関わろうとしない。無害化処理事業には莫大な税金が注ぎ込まれているのだが、環境省の産業廃棄物課に確認したところ、カネカはPCBを製造・販売して利益を上げていた企業でありながら、出捐金(しゅつえんきん。寄付金のこと)を1円も出していないとのことだった。

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