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N国党・立花氏の“金儲け目的”の威力業務妨害罪を見逃す警察の態度は問題である

文=深笛義也/ライター
N国党・立花氏の“金儲け目的”の威力業務妨害罪を見逃す警察の態度は問題であるの画像1
N国党・立花氏、TOKYO MX前で抗議演説(写真:日刊現代/アフロ)

「彼が扇動して行なった、マツコ・デラックスへの抗議行動は、道路交通法違反であり威力業務妨害ですね」(警視庁OB)

 NHKから国民を守る党所属だった東京都中央区議の二瓶文徳氏に対する脅迫容疑で、同党党首の立花孝志党首は今月9日と11日、2度にわたって警視庁から任意の事情聴取を受けた。立花氏は7月にYouTubeに「(二瓶氏の)母親と彼女を知っている」「人生をつぶしにいく」などと語る動画を投稿し、二瓶氏はこれが脅迫罪にあたるとして被害届を提出していた。

 立花氏が繰り返す過激な言動をめぐっては、たとえば9月12日付東京新聞記事『【特報】N国党の危うさを考える 演説へのヤジ 「私人逮捕」』が大きく紙面を割いてその問題点を詳細に指摘しているように、すでに多くの見解が出ている。そこで本稿では、警視庁OBによる専門的見地からのコメントを基に、これまであまり触れられてこなかった点も交えて解説する。

「マツコさんの発言に抗議するとして、TOKYO MX(東京メトロポリタンテレビジョン)のスタジオに面する歩道に立花氏の呼びかけで多くの人々が集まりました。ユーチューブ動画を見る限り、明らかに交通に支障が出ていました。彼は『立花孝志ひとり放送局 』を経営していますが、この“抗議行動”の様子をユーチューブ動画で流し、利益を得ているわけです」

 ひとり放送局には、会社の収支を紹介する動画があり、月間390万円ほどだったユーチューブからの収入が、1200万円に跳ね上がったことを立花氏が語っている。

 道路交通法第77条を見ると、道路の使用について所轄の警察署長の許可を必要とするものとして、工事や露店、祭礼行事などの他、ロケーションが挙げられている。収益を伴うユーチューブ動画の撮影はロケーションに当たり、許可が必要な行為となる。実際、放送局が道路を占用して撮影を行う場合は、許可を得る必要がある。

 ことの経緯を、簡単におさらいしておこう。

 7月29日放送の『5時に夢中!』(MX)で、N国が話題になったところで、マツコが「一体これから何をしてくれるか、判断しないと。いまのままじゃ、ね、ただ気持ち悪い人たちだから」「受信料を払うことに対して疑問を持っている、真剣にそう思っている人もいるだろうけど、なんか、ふざけて入れている人も相当数いるんだろうなあとは思う」と批判的な発言を行った。

 これに対して8月12日、立花氏本人と支援者、取材者、およそ100名ほどが、『5時に夢中!』生放送中のMX前に集まった。立花氏はマツコの発言は放送法4条で謳われている「政治的に公平であること」に反するなどとして、「コソコソせずに出てきたらいい」「マツコ・デラックスをぶっ壊す!」などと叫んだ。

威力業務妨害罪

 ユーチューブのための撮影を伴った“抗議行動”は、19日と26日にも行われた。この3回について、道路使用許可が取られているかどうか、警視庁麹町署に確かめたところ、「個々の案件についてお答えしかねる」との返答であった。当日の状況を説明し「これは許可を得るべき道路の使い方ではないでしょうか?」と問いかけると、「それは、偶発的に集まったかどうか判断しにくいところですので……」と言葉を濁した。

 ひとり放送局のユーチューブ動画では、MX前に到着する寸前の立花氏の車内の様子が映されている。そこで立花氏は「(MXは)警察に警備要請しているらしくて」「そんなことに税金使うな」「なんでこんなに警察呼んでんの」と呟いている。つまり、立花氏は警察に道路使用許可の申請は行っていないということだ。

 MX前の歩道で“抗議行動”を始めると、「みなさんが自発的に来ているんで」と偶発的な集合であるかのような発言を、立花氏は発している。

「MX前に行くと、ひとり放送局のユーチューブ動画で宣言してるんですから、これは通らないでしょう。何かのイベントを告知して、そこに参加する人だって自発的に行っているわけですから。『5時に夢中!』のスタジオは全面ガラス張りになっていて、道路から見えるようになっています。ストロボを焚いて撮影する人々に、MX側がスタジオでの放送に影響するからやめてほしいと頼むと、立花氏は『公道だからかまわないでしょう』と言って、警察官に問うたところ即答できなかったことをいいことに、集まった人々にストロボを焚いてもかまわないと宣言しました。これは常識的に考えても、おかしいでしょう。

 ユーチューブ動画を見ても、ストロボなしでも撮れる明るい時間帯。MX側が口にしたのは、控えめなお願いです。スタジオ内での放送に影響が出ることを知らされながら、ストロボを焚くことを促したのは、意図的な妨害であって、威力業務妨害に当たります。公道かどうかは関係ありません。ちょっと考えてみればわかりますが、歩道から拡声器などを使ってお店に向かってがなり立てて営業を妨害すれば、威力業務妨害になります。過去には、嫌がらせ目的で何度も電話をかけた行為が、威力業務妨害罪で有罪になった例があります。自分の電話をどう使おうが勝手でしょ、とはならないのです。

 立花氏の特徴は、生半可な法律知識しかなくて、それを自分のいいように解釈して行動することです。国会議員だからといってすべての法律に精通しているわけではないでしょうが、遵法精神が著しく欠けていることは問題でしょう。道路使用許可が得られる行動でもなく、威力業務妨害も重なれば、本来なら警察は解散を促すべきところですが、相手が国会議員だということで、そこまでできなかったということはあるでしょうね」(警視庁OB)

 MX前での立花氏の行動。2回目以降の19日と26日は、真ん中がプラスチック棒で仕切られた歩道の片側に、集まった人々は蝟集することになった。19日のユーチューブ動画で、「警察とも確認を取りました」と言っている。道路使用許可が得られたのかどうかは不明だが、警察との合意ができたのだろう。

「しかし、それでも疑問です」と警視庁OBは語る。警察庁交通局交通規制課が2006年に出した、ロケーションに伴う道路使用許可の留意事項には、以下のように書かれている。

「ロケーションは民間事業者等による収益を伴う経済活動であることから、『民間事業者等による経済活動に伴う道路使用許可の取り扱いについて』に示したとおり、その目的について地域の活性化や都市における賑わいの創出等に資するものであると認められるか否か等社会的意義の有無に留意すること」

「ロケーションのために道路を使用することについて、地域住民、道路利用者等の合意形成の円滑化を図るため、『イベント等に伴う道路使用許可の取り扱いについて』の記3(2)の措置を講じた上、合意形成状況について慎重に見定めるよう配意すること」

※記3(2)とは、「警察署の担当者に対する指導及び教養の徹底」を差す。

 もちろん、ここで言われている「賑わい」とは祭りやイベント等、地域の活性化につながるものを指すのであって、テレビ局の前に抗議のために集まることではない。

「本来であれば、立花氏の呼びかけによるMX前での行動について、麹町署は合意すべきではなかったと言えます。インターネットを通じた犯罪も増えており、警察もその研究には努めています。だけどこの“抗議行動”が、ひとり放送局という民間事業者による収益を伴う経済活動であるということまで気づかなかった可能性はあります。警察と相談する際に、より遵法精神が求められる国会議員である立花氏のほうから申し述べるべきでしょう。

 また、行動の呼びかけ人が国会議員であることから、麹町署も合意せざるを得なかったという要素も否定できません。2回目以降、歩道に面したスタジオには紗幕が降ろされました。ストロボを焚かないでくれという控えめなお願いも聞き入れてくれないとわかり、威力業務妨害に備えたのでしょう。国会議員が呼びかける威力業務妨害に、民間の会社が自力で防御しなければならないなんて、ちょっと異常じゃないですかね」(警視庁OB)

国会議員としての特権を利用

 立花氏はMX前での抗議行動と軌を一にして、『5時に夢中!』のスポンサーである崎陽軒の商品の不買運動を呼びかけた。不買運動というのは消費者運動の一形態であり、力を持たない市民が団結して行うものだ。国会議員がこれを呼びかけるなど、日本ではこれまでに聞いたことがない。

 だが、これを受けてツイッターには、ダルビッシュ有投手が「崎陽軒に罪はない気がする笑 てか良く新幹線乗るとき買ってたなー。また食べたい」、カンニング竹山が「崎陽軒のシウマイ弁当を意識的に買う」、ロバート・キャンベル氏が「お腹すいた。なんか急に崎陽軒のシウマイ、食べたくない?w」、高須克弥氏が「崎陽軒を守りす。シュウマイ弁当なう」などと呟いて購買行動が広がり、崎陽軒のシウマイ売り場のショーケースには「完売御礼」の札が並ぶことになった。

「崎陽軒さんにとっては、複雑な気持ちだったと思いますよ」

 そう語るのは、横浜の食品関係者である。

「業界に流れてきている話では、お盆はシウマイ弁当の需要が高まり生産も増やしているが、それでも足りないぐらいの状況。N国さんが不買運動を呼びかけて逆に買う人が多くなり、完売状態になってしまったわけです。そのために、普段から買っているお客さんが買えなかった可能性がある。完売したからといって、崎陽軒さんとしては手放しで喜べるわけじゃないんです。N国さんも罪なことをしたもんです」

 立花氏はマツコとMXに対する集団訴訟を呼びかけている。それについて、どのようなやり方がいいのかという意見交換会を、参議院議員会館の会議室にマスコミ、市民を集めて行った。

「これもやはり、ひとり放送局のユーチューブ動画で流されており、営利行為です。彼は『数字を持っている人を叩くのは戦略としてあり』と語っていて、確信犯だと思います」(警視庁OB)

 参議院広報課に確かめたところ、「使い方などによって、許可、不許可などの判断をすることはありません」とのこと。議員が申請すれば、どんな用途でも使えるのだ。

 これで思い出すのは、2010年に蓮舫氏(当時・行政刷新相)が被写体となり、国会議事堂3階の渡り廊下で撮られたグラビア写真である。それはファッション誌「VOGUE NIPPON」(コンデナスト・ジャパン)に載ったが、着ている服のブランド名などが書かれており宣伝色の強いものだった。国会内では、私的な宣伝や営利目的の撮影は許可されていないため、議院運営委員会で問題となった。

 既得権益の象徴であるとして「NHKをぶっ壊す!」と叫んで当選した立花氏だが、国会議員としての特権を、自分のために使いすぎているのではないだろうか。

(文=深笛義也/ライター)

深笛義也/ライター

深笛義也/ライター

1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。10代後半から20代後半まで、現地に居住するなどして、成田空港反対闘争を支援。30代からライターになる。ノンフィクションも多数執筆している。

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