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マントラを暗記するインド人、脳が大きいことが判明

文=水守啓/サイエンスライター
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「gettyimages」より

マントラの詠唱は脳を大きくさせる?

 言葉には意味があり、対応する固有の音(おん)がある。人がある言葉を発すると、聞く人の多くはその言葉の意味を意識する。自ら言葉を発する際は、その前にすでにその言葉の意味を意識しているものである。言葉が書かれた紙が存在するだけでは、人に特別な影響はもたらさないが、人が声を出してその言葉を発すると、意識が介入し、現実世界になんらかの影響をもたらしやすくなる。そんなことがあるためか、古来、言葉には霊的な力が宿るとされ、言霊という表現がある。

 実際に、意識するということは、脳内で電気信号が行き交うなど、体内でなんらかの化学反応が起こることを意味する。我々は決して周囲の世界と隔絶されておらず、体内での化学反応は自ずと体外にも影響をもたらす。これは、カーッと熱くなれば、実際に汗や熱を放出することからもわかることである。

 また、書かれた字面を目で追うだけではなく、実際に声に出して言葉を発すると、口や表情といった物理的な変化を伴って意志が強化され、現実味や実行性が高まるためか、客観的な結果を招きやすくなる。少なくとも、そんな変化を起こしやすいとされる特別な言葉を発し続けた場合、自身に物理的な変化が起きうることを示した研究報告がある。

 2018年1月2日、アメリカの科学誌「サイエンティフィック・アメリカン」のブログに、「サンスクリット効果を探求する神経科学者」という題名の論文が掲載された。その論文の副題には、「古代のマントラを暗記すると認知機能に関わる脳の部位がサイズを増大させることがMRI検査で示された」とあり、世間の注目を浴びた。

 論文の著者は神経科学者のジェームズ・ハーツェル博士。長年サンスクリット語の研究と翻訳に従事してきた彼は、ある時、自分の記憶力と思考力が明らかに向上していることに気づくようになった。サンスクリット語という特別な古代の言語と関わることが、その理由なのかもしれない。事実、ほかのサンスクリット語の翻訳者らも自分と同様に認識力の向上を感じてきたことを彼は耳にするようになったのだった。

 そこで、ハーツェル博士はスペインのバスク認知脳言語センターの博士研究員となったのを機に、この「サンスクリット効果」を調べてみることにした。幸い、インドには幼い頃からサンスクリット語で書かれた長いマントラを記憶し、1日何時間も詠唱する人々がいる。そんな習慣を持った古典学者らと、同じ属性の参加者らを対照群として集め、インド国立脳科学研究センターでMRIを使って、実際に脳の状態を調べてみることにしたのである。

 すると、サンクスリット語に接してきた古典学者らの左右の大脳半球には、対照群と比較して灰白質(中枢神経系の神経組織のうち、神経細胞の細胞体が存在している部位)が10%増加し、大脳皮質(大脳表面に広がる、神経細胞の灰白質の薄い層)の厚みもかなり増加していたのである。また、短期的・長期的な記憶を司る右側の海馬も、より多くの灰白質を有していて、その皮質下構造の75%を占めていたことがわかったのである。

 調査の対象となった古典学者らが、習慣的にマントラを唱えることを除いて、どのような日常を過ごしているのかは不明確である。また、記憶することと、声に出すこと、それぞれの影響を区別するのも難しい。そのため、調査の正確さに関しては気になる点はあるものの、このような事実は専門家にとっても注目に値するものであった。だが、それが意味することを真剣に考え、科学的に考察する人となると、ほとんどいないようである。しかし、少し考察してみるだけで、興味深いことが見えてくる。

音波振動も無視できない?

 脳が大きくなること自体、もちろん、悪いことではないはずである。つまり、特別何も行わなければ、脳は完全なる成長・活性化の手前の段階にあると思われる。本来、もっと大きくなれるにもかかわらず、縮んだままということもできるかもしれない。

 では、どうしたら脳は大きくなるのだろうか? まず、よく頭を使うことである。これにより神経細胞は増える。また、血流を促し、脳細胞に十分な栄養が供給されるようにすることが不可欠である。さらに、細胞分裂が活発に行われるだけでなく、個々の細胞が最大限広がることも必要と思われる。

 もちろん、ここでは、口から摂取した栄養が単に問題の脳の部位に届いたから変化が及んだのではなく、記憶したマントラ(サンスクリット語)を唱えたことがその要因にあるとされる。つまり、記憶した言葉を思い出し、口を動かし、声を発したことが発端であると考える。

 筆者の考察では、頭をよく使うということが最も重要と思われるが、物理的な側面に注目してみると、口を動かし、口腔内で反響した音波振動が、頭部(骨、筋肉、脂肪)を伝わって脳に届くという刺激も重要と思われる。また、口から発した音を一瞬遅れて自らの耳で聞き取り、その信号が神経を介して、あるいは、振動が骨、筋肉、脂肪を介して伝わることも考えられる。音を耳だけでなく、体全体で受け止めることもあるだろう。ひとたび発せられた言葉の影響力は、こだまするように複数の波として到来して、その波に我々は飲み込まれていく。

 そして、そんな刺激の内容、つまり、質として、声の周波数の高低をはじめ、読み上げるスピードや抑揚、テンポ等も考慮する必要がある。

 この世界に存在するあらゆる物質は形や大きさを伴い、アンテナのように、特定の周波数で発振・共鳴を起こしやすい。人体を構成する各パーツもアンテナのように、それぞれ特定の周波数に反応しやすい。健康な生命体の細胞は、互いに同調して持続的な振動を行う。そのため、詠唱したマントラ音声の波長域が特定の脳の部位、おそらくは、頭部周長の整数倍と近く、共鳴によってうまく刺激を与えていた可能性も考えられる。

 つまり、周波数の変化や適切なテンポを伴った音波振動が効率的に頭部に到達し、頭蓋骨のすぐ内側の大脳皮質を共鳴させて、持続的に震わせることで、細胞が弛緩した状態となる。これにより、それまで以上に栄養分が細胞内に送り届けられるようになる。これが、脳をよく使うという基本的な条件下で起これば、脳が大きくなるという現象を促すことになるのではなかろうか。

 人の意識が健康に大きく影響を及ぼすことはよく知られているが、このような考察を行ってみると、音波振動も無視できないことが見えてくる。そして、おそらくは、サンスクリット語と、ヒトがサンスクリット語を発する際の音波が、巧妙にアンテナとしての頭蓋骨を刺激し、潜在能力を引き出しやすい条件を整える――。そんなこともあって、サンスクリット語は霊的なエネルギーをもった言語といわれるのではなかろうか。

(文=水守啓/サイエンスライター)

水守啓/サイエンスライター

水守啓/サイエンスライター

「自然との同調」を手掛かりに神秘現象の解明に取り組むナチュラリスト、サイエンスライター、リバース・スピーチ分析家。 現在は、千葉県房総半島の里山で農作業を通じて自然と触れ合う中、研究・執筆・講演活動等を行っている。

著書に『底なしの闇の[癌ビジネス]』(ヒカルランド)、『超不都合な科学的真実』、『超不都合な科学的真実 [長寿の謎/失われた古代文明]編』、『宇宙エネルギーがここに隠されていた』(徳間書店)、 『リバース・スピーチ』(学研プラス)、『聖蛙の使者KEROMIとの対話』、『世界を変えるNESARAの謎』(明窓出版)などがある。

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