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横浜、カジノ誘致“内定取り消し”の気配…東京の再浮上に焦り、急遽正式表明で死守へ

文=小川裕夫/フリーランスライター
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横浜、カジノ誘致を正式決定 港運協会が反対(写真:東洋経済/アフロ)

 横浜市の林文子市長が、白紙としてきたカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致の方針を撤回。改めて、誘致へと舵を切った。

 IRをめぐっては、自治体間で誘致合戦が過熱している。国内では2~3カ所しか開設されない見通しということもあり、関東と関西に1カ所ずつという案が有力視されている。

 関西では大阪市がIR誘致に躍起になっており、万博会場跡地となる夢洲への誘致を進めてきた。IRを大阪経済の起爆剤にするという青写真を描いていたが、最近になって事業者が撤退する機運が漂い、IR招致レースの本命と目されていたものの後退している。

 関西における対抗馬の和歌山県は、和歌山市、白浜など候補地の絞り込みが最終段階まで進んでいないため、大阪の後塵を拝してきた。それでも和歌山はフランスのIR事業者ルシアン・バリエールと組み、誘致に弾みをつける。

 関東側の本命は横浜。これまでに林市長が誘致を表明しなかったのは、「表明するまでもなく、黙っていてもIRが横浜に転がり込んでくる」という目算があったからだ。しかし、横浜財界のドンといわれる藤木幸夫氏が「カジノで横浜は発展しない」と反対を表明。藤木氏の抵抗はすさまじく、そのため観光関係者の間では「横浜のIRに黄信号が灯った」との見方が濃くなっていた。

 関東では、東京都と千葉市がIR誘致に手を挙げている。東京都は石原都政時にカジノのプレイベントを開催するなど準備を進めていた。当時から都は台場一帯に用地を確保し、他自治体に先んじていたが、舛添要一氏が都知事に就任すると依存症対策の面からIR誘致はトーンダウン。東京都港湾局の職員は言う。

「石原・猪瀬路線では東京の観光振興という目的から、お台場にIRを誘致することで海外から観光客が集まると試算。そうした面からIRは推進されていたのですが、今般の訪日外国人観光客の増加を見るにつけ、『IRがなくても十分に外国人は訪日してくれる』という確信が強くなっています。状況の変化もあって、東京都はIRに消極的なスタンスに転換したのです」

東京都の変化

 一方、現在の小池百合子都知事は、IRへのスタンスを明確にしてこなかったため、都は消極的だとみられてきた。それが「IRは横浜」という機運を強くした。しかし、「財界から『東京にIRを』とのプッシュは強くなりつつある」(観光業界関係者)ことで、余裕をみせていた林市長が豹変。ついに正式なIR誘致表明につながったのではないか、と見る関係者は少なくない。

 ある地方自治体の職員は言う。

「林文子市長はIR誘致の大義名分を『少子高齢化に伴って税収減は確実で、その減収分を補うためにIRを誘致する』と述べています。しかし、少子高齢化は横浜市だけが抱える問題ではありません。今までは『黙っていても、最終的にIRは横浜に決まる』と余裕をみせていましたが、東京がIRの有力候補に再浮上してきたから、慌てたのでしょう」

 正式表明をした横浜市は、正々堂々とカジノ運営者やデベロッパーなどと交渉をすることが可能になった。業界関係者の間では「横浜がわずかにリードした」と分析されている。しかし、予断を許さない状況は変わっていない。

 IR争奪戦は東京五輪が閉幕するまでは、水面下での争いにとどまるだろう。関東は東京と横浜、そして関西は大阪と和歌山。いずれの都市がIR誘致を勝ち取っても、それがゴールというわけではない。そこから先にも、クリアしなければならない課題は待ち受けている。

(文=小川裕夫/フリーランスライター)

小川裕夫/フリーライター

小川裕夫/フリーライター

行政誌編集者を経てフリーランスに。都市計画や鉄道などを専門分野として取材執筆。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)、『封印された東京の謎』(彩図社)、『東京王』(ぶんか社)など。

Twitter:@ogawahiro

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