当事者に必要なマインドとスキル
「それは、マインドとスキルが必要だと思います」と渡辺さんは答える。
どういうことだろうか。
「マインドとは、自己認識のことです。少し引いて自分自身を見つめること、客観的に自分自身を見つめられるかということです。
まず、今自分が苦しくつらいことを認識します。そして、なぜ今の苦しい状況があるのか、社会や政治のなかで自分はどういう場所にいるか。このように見ていくことで、自分自身を直視し、自分の抱える問題が社会全体のなかに位置づけられるのだと認識することです。そして自分を責めるのをやめ、『私は悪くない』と思えるようにすることです」(同)
つまり、自分自身を客観的に認知することにほかならない。そして、認知するに至ったきっかけから結果に至るプロセスのすべてを、自分自身がしっかりと把握することの大切さを、渡辺さんは説いている。
簡単に言ってしまうと、自分自身を責めていた人が、「自分は悪くない」と客観的に認識できる方法が大切だ。
2つ目の「スキル」については、どうか。
「自分たちの存在を社会に認知させ、何が問題かを伝える方法です。たとえば、派遣労働者が自分の苦しい状況を世の中に訴えるとき、ただ『大変だ』『つらい』『こんなヒドイめにあった』と言っているだけでは、残念ですがなかなか伝わりません。
自分が働いているところはどんな業界なのか、その業界や会社の社会的使命は何か、働いている会社が業界のナンバーワンなのか中堅なのか中小零細なのか……。このような周囲の情報や客観的位置づけを話しながら、自分自身の個人体験を話していくのです」(同)
参院選で、れいわ新選組から当選した2人、難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の船後靖彦さんと重度身体障がい者の木村英子さんは、マインドとスキルの両方を兼ね備えていると渡辺さんは言う。
渡辺さん自身も、マインドとスキルを意識し、シングルマザーの労働実態のデータや歴史、非正規雇用問題の全体構造を踏まえたうえで、自らの生生しい体験を語り、近未来の変革を語り続けている。
その主張は「ど庶民による、ど庶民のための政治」だ。
(構成=林克明/ジャーナリスト)
<関連情報>
渡辺てる子講演会
9月21日(土)18:30~ 東京都文京区「文京シビックセンター26階・スカイホール」
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参加申し込み先 kusanomi@notnet.jp