木下隆之「クルマ激辛定食」

新型スカイラインは日産の“場当たり”ブランド戦略の象徴…トヨタの緻密な戦略と真逆

ニッサン・スカイライン

 第13代目「スカイライン」が、マイナーチェンジを受けてこの秋に誕生する。現行モデルのデビューは2013年11月だから、そろそろ新鮮味が薄れてきたころだ。日産自動車は低迷する業績回復のカンフル剤として、約6年経過したスカイラインをリニューアル。さまざまな技術投入という大鉈を振るったのである。

 今回の注目点は、「宗旨替え」である。インフィニティブランドを改め、日産ブランドに里帰りしたことに驚きを隠せない。

 そもそも、スカイラインがインフィニティだったことを知る人がどれだけいるのかも怪しい。それもそのはずで、スカイラインはもともとプリンス自動車の主力車種だったものの、日産に吸収合併されたのを機に「ニッサン・スカイライン」となり、それ以来、長きにわたって人気モデルであり続けた。

 それがあるとき突然、北米で展開していた高級インフィニティブランドのバッジを着けることになった。戸惑ったのは僕ら以上に、当のスカイラインだったことだろう。それもつかの間、またまた日産ブランドに里帰りなのである。時代に翻弄され続けた。ブランドを弄ばれた。ブランド戦略なきブランド。いつしか日産迷走の象徴になってしまった。

 そもそも、インフィニティが国内展開されていたことすら、浸透していない。トヨタ自動車がアメリカで生み育てた高級レクサスブランドを日本で展開して成功させたのは、緻密な戦略とブランドへの愛情があったからだ。それとは対照的に日産は、ブランドを安易に扱った代償が残る。日産のブランド戦略の迷いが、スカイラインにのしかかってしまった格好だ。

 デザイン的にも迷走がうかがえる。“インフィニティ顔”が、唐突に日産の象徴である「Vモーショングリル」に改められた。「GT-R」や「リーフ」と同系統の顔つきになったことは、日産ブランド回帰を主張しているものの、ボディは従来と変わらない。つまり、インフィニティと主張していたデザインそのものゆえに、“後付け感”が拭えないのだ。テールランプの「丸形4灯」回帰は個人的には歓迎したいが、「インフィニティからニッサンへの回帰」を、かすれた喉で懸命に叫んでいるかのようだった。

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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